ホビットMk-Ⅱ編 自らの定義
まあなんにせよ、<人間社会のあれこれ>については実際にそれが大きくなってきたころに改めて考えなきゃいけないことでもある。
今はとにかく、そのための準備期間であり、そのために必要な情報をホビットMk-Ⅱ達が集めてくれているんだ。
そうして密林に進入したホビットMk-Ⅱは、まず植物について確認し始めた。旗艦ドローンを中継してデータを送信。サーバー側でこれまで得られた情報と突き合わせ、新種かどうかを解析する。
と、もうすでに新種の可能性のある植物がいくつも見付かった。素人である俺の目にはほとんど違いが判別できないが、細かい部分が結構違っているようだ。
これが、<環境の違い>による一時的なものなのか、それとも恒常的なものなのかについては詳細に分析にする必要があるものの、<新種の可能性>というだけならそれだけでも十分な違いなんだと。
さらには、木の幹に張り付いた<粘菌>らしきものも、発見できた。これまた今までに発見されていないものである可能性が高いとのことで、
「へえ……!」
シモーヌが目を輝かせて画面に見入っていた。ということは、今頃、コーネリアス号でもシオが同じように目を輝かせながら画面に見入ってることだろう。
<シモーヌ>と<シオ>は、今では別人でありつつ、同じ、
<秋嶋シモーヌをオリジナルとするコピー>
なわけで、<同じ表情>をすることは今もある。
だが、
<誰かのコピーという由来>
であっても、地球人社会では<人間>とは認められなくても、シモーヌもシオも、今では間違いなく<朋群人>であり、
<朋群人という人間>
なんだ。地球人社会がそれを認めるか認めないかは関係ない。地球人にお伺いを立てててその顔色を窺って、それで自分達が人間かどうかを決めるなんてのは、おかしいよな。人間は生まれた時から人間で、人間以外の何ものでもないんだし。
朋群人もそうだ。シモーヌもシオも、生まれたその時から人間なんだよ。
<自分が人間かどうかの定義>
を、他の誰かに委ねるな。
『自分は人間だ』
と思えばそれはもう人間なんだ。
エレクシアも言ってたよ。
「ロボットは自らを<人間>とは思いません。ロボットはロボットです。どこまでも<人間の幸福に資する道具>でしかない。そしてそれを疑問には思いません。
ですが人間は、自らの定義に惑うことがあります。自身が何者であるのかを見失うことがあります。ですが、それは<心>を持つがゆえだと私達ロボットは考えます。
これが私達ロボットと人間の違いなのです」
ってな。




