ホビットMk-Ⅱ編 傷も浅く済む
で、ホビットサンク村での、
<花壇を巡る諍い>
は、<長の仲裁>を受けることによって終息する方向へと向かった。
ただしこれも、長自身が信頼されているからこそのものだというのも伝わってくる。
<村の皆から信頼されているという設定>
があればこそだな。
それがなければおそらく誰も納得してくれなかっただろう。そうすると強権を発動して力尽くで押さえ付けるしかなくなるが、それは結局、鬱屈したものを蓄積させ、やがてはコミュニティそのものを不安定化させていくこともまた、分かっている。
<崩壊したコミュニティ>
というものについて詳細に分析にしても、そこが大きな要因の一つになっているのが分かるそうだ。
もちろん原因はそれだけじゃなく、いくつもの原因が複雑に絡み合って、時にはそれぞれが増幅させる作用を生じさせて<破局>へと導いたわけだが、決して影響は小さくなかったとも言われている。
人間はえてして安易に力に頼って他者を抑え付けようとするが、秩序を維持しようとするが、そうされればされるほど反発が強くなっていくのもまた、<人間という生き物>だというのは紛れもない事実だよな。その事実から目を逸らしていて、人間という生き物の集団を穏当にまとめ上げることなんてできるはずもないだろうさ。
俺もそれは肝に銘じてる。だからこそのこのシミュレーションでもある。
その後、<花を育てるホビットMk-Ⅱ>は、渋々ながら自身の家の敷地内に収まる形で花壇を作り直し、<隣人としてのホビットMk-Ⅱ>も、花びらなどが自分の敷地内に落ちる程度のことについては大目に見ることに落ち着いた。
加えて、種が境界線を越えて落ちて、それで勝手に花が育つことについても、成り行きに任せることにしたそうだ。あくまで、
『<花を育てるホビットMk-Ⅱ>が境界線を越えて<花壇という設備>を自分の敷地内に構築するような真似は認めない』
というだけで、
『<花>そのものが持つ生態として繁殖を行うのは、構わない』
ってことだな。<隣人としてのホビットMk-Ⅱ>も、別に花自体に恨みがあるわけじゃないわけで。
ただこれも、さらに拗れて問題が長期化した場合には、
『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』
状態になって花そのものを嫌悪することにもなりかねなかっただろう。人間ってのはそういう部分もあるのは事実だしな。
とにかく、<トラブル>ってのは早め早めに対処するのが大事なんだろうさ。
<イジメ>なども、早い段階で対処してもらえれば傷も浅く済むしな。




