ホビットMk-Ⅱ編 我慢ができない生き物
『信号を守る』
『横断禁止のところを渡らない』
<その程度の些細な我慢>を親がしていないのに子供がなんで我慢を覚えられると思うんだか。
むしろ、
『詭弁と言い訳で自分の<我慢できない性根>を正当化する』
という行いの<絶好の手本>になってしまうはずだけどな。
『こうやって言い逃れるんだ』
と、親が自らの振る舞いで子供に示してしまってるだろ。しかも大変な説得力を持って。
なにしろ子供にとっては<人間そのものの代表>である親が自らそれをしてるんだ。この説得力を上回ることは並大抵じゃない。生半可なことじゃない。
子供が成長過程において我儘を口にし始める頃に、たいていの親はそれを一方的に抑え付けようとするが、こうなると子供の方も感情的になって<駄々>をこね始めたりもする。
で、親はさらに感情的になって威圧や暴力でそれを抑え付けようとする。その振る舞いそのものが、
『自分の感情を優先するためなら威圧や暴力を用いてもいい』
と子供に学ばせてしまうというのにな。
現に、成長してからも相手を威圧や暴力で従わせようとする輩の多いこと多いこと。普段は<いい人>のように思われる人間でさえ、裏に回ればイジメやDVや虐待を行ってたりなんてのは、珍しくもないよな?
それどころか、子供に対してそんな風な態度を取ってきておいて、子供が成長して自分より強くなった途端に立場が逆転、<家庭内暴力>的に子供に支配されるようになると、今度は<被害者>として振る舞うようになったりもする。
しかも世間はそんな親に同情的だったり。
いやはや、どこまで自分に甘いんだろうな。恐れ入るよ。
だが、ホビットサンク村のホビットMk-Ⅱ達には、そもそもそんな振る舞いをしなきゃならない理由が欠片もない。なにしろ<心>を持たないんだから<我儘>を口にすることもないわけで、自分の都合で法律やルールを捻じ曲げることもしないし、その必要もない。
なのに人間には、その必要があったりする。それを必要だと考えてるのがいる。
なぜだ?
『心を持つから』
か? しかしそれだけじゃ、全員が全員、そうせずにいられないわけじゃないことの説明がつかない。そんなことをしなくても大丈夫な人間もいる。その差はどこからくる?
<個体差>
か? 生まれつきの性質の違いか? だがそんなものは、本人がどういう人間になるかという結果に対してわずかに影響を与えるだけだというのも確認されているんだそうだ。影響がないわけじゃないが、絶対ってわけじゃないんだよ。




