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川縁(川じゃなくて河かもしれんが)

ローバーで移動中も、エレクシアにすべて記録してもらっていた。植物の繁茂状態。植生。生息している動物等々。役に立てる当てはないが、まあ何となくな。


ここに降下中に撮られた映像に一部エラーが出ていて再生できないから広い範囲の情報は今のところよく分からないんだが、取り敢えず今分かっている範囲では、どうやらここの動物は、地球における恐竜的な生き物が直接進化したものが多そうだっていう印象だった。


地球では大型の恐竜は絶滅し、小型の恐竜の一部が鳥に進化したというのが有力視されてるが、ここでは、大型化はやめたものの多くの種類が途絶えることなくそのまま進化した感じかもしれない。見かける鳥や小動物が、爬虫類っぽいんだ。羽毛や体毛の生えた爬虫類と言うか。


と言っても、爬虫類っぽいのは外見の印象だけで、殆どが恒温動物だっていうのは既に分かってる。だから余計に恐竜が進化したものだっていう推測が成り立つんだよな。恐竜も恒温動物だったらしいし。


逆に、恐竜がそのまま小型化して生き延びたからか、明らかに爬虫類って感じの爬虫類的な生物は現在のところ見付かってない。昆虫はいるんだがなあ。


そうそう。昆虫と言えば、ここに生息してる昆虫も、種類こそ違えど地球の昆虫に非常に良く似ていた。頭、胸、胴体に分かれた体。胸から生えた六本の脚と羽。


他の、生物の存在が確認されている惑星でも、同じ特徴を持った昆虫が発見されているものがある。だから地球の昆虫も、小惑星などに付着して宇宙から飛来したものだという説が今では有力視されている。昆虫以外の節足動物では、特徴の異なったものが多いんだがな。


あと、哺乳類的な動物についても、地球の四肢動物とは異なる六肢動物も多い。むしろ六肢動物の方が割合としては多いそうだ。昆虫が六肢であることからみても、その方が身体能力的に有利らしいというのは生物学者の弁である。


その反面、八肢以上の多脚類となると、節足動物以外では極端に減るらしい。重力下における生物の進化としては、四肢ないし六肢がバランス的に有利なんだろうな。


なんてことも踏まえつつ改めてここの生き物の様子を見る。


基本的には四肢動物が大半を占めるようで、正直、俺としてもその方が違和感が少なくて助かってるかな。


これまで、(ひそか)(じん)以上の大型の動物は見かけなかったが、木が密生しているところでは大型の動物は生息しにくいだろうから、開けたサバンナのようなところではもっと大型の動物も生息している可能性はあるだろう。


あと、目の前に流れる川(いや、たっぷり二十メートル以上の川幅があるから河と言った方がニュアンスが伝わるか)にも、大型の動物がいる可能性はあるな。カバやワニ的な。


窓から外を見た(ひそか)の様子も、やや落ち着きのないものに変わっていた気がする。


「発汗、筋肉の緊張、心拍数の増大。明らかに怯えていますね。この河を危険なものと認識しているようです」


エレクシアが(ひそか)の様子を説明してくれた。


「となれば、(ひそか)にとっては危険で恐怖を感じる動物がいる可能性があるということか。デカいのに限らず、カンディルのような肉食魚や寄生虫も危険だな」


そうだ。カバやワニも恐ろしいが、人間の穴という穴から侵入して肉を貪るというカンディルのような魚やさらに小さい寄生虫の類は、一見しただけでは発見が難しく気付いた時には手遅れということがあるから怖いのだ。高い戦闘力を持つエレクシアでも、小さくて数が多いのを相手にすると防ぎきれないし。


ローバーを使ったのは、そういう理由もある。水辺は特に生物が多く集まるから危険なのも当然増えるわけで。怪我をするだけで致命的にもなりうる現状では生身で近付くのは少々リスクが高すぎる。


と、そんなことを考えている時、ドンッ!という音が上からしてきて俺達は全員、そちらを見上げてしまっていた。


「何かが屋根の上に飛び乗ったようですね。心音が拾えます。及び羽音。私が外に出て確認しましょうか?」


そうエレクシアは申し出たが、俺は首を横に振った。


「先にドローンを上げて確認しよう」


エレクシアなら大丈夫だとは思うが、万が一ということもある。そこで俺は、もし壊れても予備がまだあるマイクロドローンを使うことにした。


マイクロドローンは、全長三センチほどの昆虫を模したカメラ付きのドローンだ。拠点になっている宇宙船の周囲にも数十機放って監視カメラ代わりにしている。ローバーの屋根にもマイクロドローンを収納したコンテナを取り付けてあって、車内から操作も出来る。


というわけでさっそく、マイクロドローンを一機、放ってみた。カメラの画像がコンソールに映し出される。


が、何かの生き物の影が見えたと思った瞬間に画面が真っ暗になり、信号が途絶えた。


「食われたかな?」


「食われましたね」


俺とエレクシアは顔を見合わせる。


時々あるのだ。昆虫と勘違いした動物に捕食されるということが。そして、屋根の上にカツンと小さな固いものがぶつかる音が。


「吐き出したかな?」


「吐き出しましたね」


口に入れてはみたものの食えないと判断して吐き出したのだと俺達は思った。


なので今度は、まず全速力でローバーから離れた後に振り返らせてみた。そうしてようやく、ローバーの上にいる何者かの姿を確認することができたのだった。



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