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丈編 その日は突然

だが、そんなこんながある何気ない毎日の中で、<その日>は突然やってきた。


これまでもそうだったが、あいつは本当に俺に<気配>を悟らせないんだ。


だからってなにもこんなことまで隠しきらなくてもいいのにな……




と言うのも、狩りに出ていた(じょう)が、まるで、


『疲れたから一休み』


みたいな感じで木の幹に寄りかかったまま息絶えてたんだ。


ああもうほんとに、(じょう)の奴……!


それを発見したのが、ドーベルマンDK-a拾弐(じゅうに)号機だった。彼に付けたチップは、コーネリアス号の乗員達が所在確認及びバイタルサインの確認をするために使っているものだったから、バイタルサインも送られてきていて、異変があればすぐに分かるものだった。例の若いマンティアンに付けたものと違う、元々、コーネリアス号に残されていたものだ。


なのに、バイタルサインが検出できなくなったことで慌てて拾弐(じゅうに)号機を向かわせたんだ。そうして、まるっきり『休んでる』姿のまま永遠の眠りについていた(じょう)を見付けたと。


いずれこの時が来るのは分かってたし、身構えていたのに、覚悟もしていたのに、それでもあいつはいつもと変わらずいてくれたから、つい油断していた。


食欲だって、若い頃に比べれば明らかに落ちていたものの、最近だけを見れば普通にあったように見えたのにな……




拾弐(じゅうに)号機は、<助手>として連れてきていたホビットMk-Ⅱと連携してマニピュレータをタンカ代わりに使い、彼の体をそこに乗せて、彼の<仮の巣>のあるところまで搬送してくれた。そうしてホビットMk-Ⅱと共に地面に穴を掘り、彼を寝かせ、敢えてその状態のまま翌日まで待機してくれた。万が一にも蘇生した場合に備えてだ。


しかし、発見から二十四時間が経ってもその気配もなく、同時に、詳細に確認したところ不可逆的な変化が起こっている、つまり、


『脳が崩壊し始めている』


ことを示すデータが検出されたことで、土をかぶせて埋葬することになった。


この役目についても、拾弐(じゅうに)号機とホビットMk-Ⅱは、ロボットであるからこそまったく負担に感じることもなく、淡々とこなしてくれたんだ。


ただ、人間である俺やシモーヌは、どうしても<申し訳なさ>を感じてしまったりもする。


「ありがとうな」


「お疲れ様」


タブレット越しとは言え、揃ってそんな風に声を掛けてしまったり。


『イエ、コレガヤクメデスカラ』


発声機能を持たないドーベルマンDK-aである拾弐(じゅうに)号機は、ホビットMk-Ⅱを介してそう返してくれたけどな。



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