丈編 俺にとっては救い
人間(地球人)ってヤツは、本当に、
『自分の考えや価値観を否定される』
ってことを極端に厭う傾向のある生き物だ。相手の方にはそんなつもりがなくても、
『否定された』
と感じるだけで過剰に反応したりもする。
これもまた、<心>を持つがゆえのそれなんだろうな。
だからこそ、エレクシアが語った、
『メイフェアの事例についてもあくまで『人間の感情であればそのように捉えるだろう』というものを再現していただけですから』
というものについても、
『なんでそんな言い方をするんだ!?』
的な反応を見せる奴もいるだろう。で、ロボットはそういう奴にも配慮して、いや、ロボットに搭載されているAIのアルゴリズムを組んだ人間がその辺りを配慮していて、エレクシアのように断定的に語ることは基本的にさせないんだ。
しかしそうなると今度は、
『本当のことを言えないのはおかしい!』
みたいに考えるのも人間(地球人)の中にはいる。実に面倒臭い。でもな、ロボットはそんな風には考えないんだよ。
『言うな』
と言われれば決してそれを口にしないし、口にしないことについてストレスも感じたりしない。そんなことをストレスに感じてしまうのも<心>を持つがゆえだし、逆に心を持たなければストレスに感じたりもしないってことだ。
だからこそ、それに違和感を覚えてしまう人間(地球人)もいる。明らかに人間とは違う考え方をしてるロボットがいかにも人間のふりをしてることに違和感を覚え、それが嫌悪感に繋がってしまってりもするんだよな。
俺もその一人だった。
いやはや、これまた実に面倒臭い話だ。どこまでも面倒臭い生き物だよ。人間ってのは。
そんなのを相手にするんだぞ? ロボットは。そのロボットが<心>なんてものを持ってみろ。どれほどのストレスに苛まれるか、分かったもんじゃない。想像しただけで頭がおかしくなりそうだ。
ロボットであるエレクシアには心がない。さりとて『心がない』からこそ彼女に負荷を掛けてしまっていないのも分かるわけで、それが安心感にも繋がってるんだろうと俺は思ってる。安心して彼女に頼ることができるんだよ。
なのに、
<人間のように気遣う振る舞い>
をされたら、いたたまれなくなる。それがただのアルゴリズムに基づくものであるのは頭では分かっていても、心はそこまで割り切ってはくれない。だから俺はメイトギアが苦手だったというのもあったんだろうなと、今では思う。
エレクシアの<ロボットらしい振る舞い>こそが、俺にとっては救いなんだ。




