子供達の日常 その10
子供達の普段の様子に改めて触れてきたが、最後は、力と悠の子である來と、來の弟の晃について触れようか。
來については基本的に、例の不定形生物由来の悠が生んだ子が果たして本来のワニ人間として普通に成長するんだろうかという関心が一番だったことは否めない。単に、うち(いや、シモーヌのことも考え合わせると力と悠も<隣人>と称した方が適切かもしれないが)に住んでる他人の子という立場だったこともあって、やはり<俺の子>とは一線を画してたと、今から思い返してみれば感じないでもない。
それでも一応は、俺の子達と同じように接してきたつもりなんだがな。
ただ、思い出という意味で記憶を手繰ってみても、出てくるのは光と一緒に遊んでいた時のものくらいで、來単独の記憶は驚くほどに少ない。俺に対しても、やっぱり何だかんだと距離を置いてたのが実感かな。
当然か。彼女からすれば<余所のおじさん>だった訳だし。
それでも、嫌われてるとか酷く警戒されてる訳じゃなかったと思う。馴れ馴れしかったり必要以上に甘えたりはしないだけで、ある意味では<群れの仲間>とは認識しててくれたんだろう。
そんな來も今じゃ母親だ。彼女の子には、当と名付けた。と言っても、こっちが勝手に個体識別の為に付けただけのものだから、彼女としてはそんな名で認識はしてないだろうけどね。
彼女ももう、立派に一人前だ。シモーヌを助けてくれた時のように、群れの仲間に対してもけっして引けを取らない、対等に渡り合える力を持ってる。グンタイ竜の襲撃の時の経験も役に立ってるのかもしれない。
ドローンのカメラには、当を胸に抱いて油断なく周囲を見渡しつつ浅瀬に凛々しく立つ彼女の姿が捉えられていた。
対して、力と悠の間に新しく生まれた晃は、血縁上では自分より先に生まれた甥となる当と同じように、母親の胸に抱かれて、俺の視線の先でおっぱいを飲んでいる。こちらも元気だ。
二人目の子も、少なくとも外見上やバイタルサイン上では<普通のワニ人間>なので、改めて不定形生物由来の体を持つ悠自身が、その肉体自体は紛れもなくワニ人間そのものだということを示しているのだと思われる。
それはつまり、同じように不定形生物由来の体を持つシモーヌもまた、その身体機能的には本当に<ただの人間>であることも示唆しているんだろうな。
以上が、子供達についての現時点での概要だ。光と灯については今後も頻繁に関わってくるだろうから敢えてここでは詳しく触れない。
これから後、特に何かが起こらない限りは触れない子も出てくるかもしれないが、<便りがないのが良い便り>ということになるだろう。




