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丈編 マンティアンとしての野生

そうして(りく)は、猪竜(シシ)幼体(こども)の命を糧とし、自身の命を繫いだ。


地球人の中には、それを<野蛮>で<下等>と考えるのも少なからずいるが、他者を貶め蔑むことを当たり前のように行う連中の何が<高貴>で<上等>なのか、俺にはさっぱり分からないけどな。


だがまあ、今はそんなのもいないし、それはいいさ。


で、(りく)から見ると血縁上は<従兄>にあたる(せい)も、立派にマンティアンとして生きていた。


むしろ、気性の点では(りく)よりもさらにマンティアンらしいマンティアンだな。


<凶暴>で<残忍>だしな。


しかも、俺達に対しても攻撃性を見せる可能性が高い。だから決して集落には近付けさせない。


<肉親の情>


なんてものを彼に期待すると悲惨な末路が待ち受けてるだろうさ。


しかしそれさえ、『そういうものだ』とあらかじめ受け止めてしまえば、どうということもない。距離感をわきまえないと危険だというだけだしな。


それに彼は、エレクシアやイレーネ、ドーベルマンDK-aがいるここには決して近付かない。無理をしなくても十分に餌が確保できる豊かな密林なればこそか。


他に餌を確保できないとなれば、危険を冒してでも踏み込んでくる可能性もあるだろうさ。


『その必要がない』というのがいかに大事かしみじみ思い知らされる。


だがその代わり、必要のあることについては容赦なく実行するのも野生の生き物だろうな。


母親である(めい)。叔父である(じょう)。兄である(えい)は、これまでパパニアンを襲おうとはしなかった。


(めい)(じょう)については、<家族>の中にまさしくパパニアンがいたことでそういう認識が芽生えなかったのかもしれない。


しかも、(えい)までがパパニアンを襲う気配すら見せなかった。


だからマンティアンとしての野生が失われていくんじゃないかと思ったりもしたが、父親である(かく)の影響を強く受けたのか、(せい)はとてもマンティアンらしいマンティアンに育ったんだよ。


(かく)は普通にパパニアンも襲おうとしてたし。


ただそれは、(ほまれ)の群れのパパニアンだったことで、申し訳ないが邪魔をさせてもらった。


しかし今回、(せい)が狙っていたのは、彼の縄張りとわずかに重なって縄張りを持つ群れのパパニアンだった。


(ほまれ)達とは何の関わりもない。


以前はそこまで縄張りを広く持ってなかった群れなんだが、俺達の集落に<縄張りを主張するパパニアン>がいないのをいいことに、徐々に縄張りを広げていってたんだ。


まあそれで大きく困ることはなかったからそのままにしてたって感じではある。


それにどうせ俺達の集落には(えい)がだいたいいつもいるからか、今以上近付いてくる様子もなかったしな。



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