思い出話 鷹 その2
他に、鷹については、俺のローバーそのものを完全に<巣>にしていて、動かすことが躊躇われるのがちょっと困りものかな。
以前、木の枝を組んでルーフキャリアを模したものを作ったり、コーネリアス号の資材を使ってルーフキャリアそのものを作ってみたりしたものの、ロクに興味を示してもくれなかった。<俺のローバーのルーフキャリア>が気に入っているらしい。
まあ、ローバーとして運用するにはコーネリアス号に搭載されてたものがあればさほど困らないし、実はまだコーネリアス号には即時運用可能なローバーが二台残されていて、そちらも整備済みだったりする。今のがもし大きく故障してもそれがあるので心配がない。さらにはパーツ状態のものも三台分あるそうだ。
俺のについては、整備だけはしてるもののもうほとんど使ってない状態だ。
ただ、翔は別にローバーには拘りはないようなので、あれはあくまで鷹だけの拘りらしい。
あと、鷹や翔もそうだったが、タカ人間はよく木の枝をかじってることがある、これは食事ではなく、どうやら<歯磨き>をしているようだ。自分の爪を爪楊枝代わりにして食べカスを取ってるだけでなく、道具を使って歯磨きをするということだな。なので、鷹の歯を電動歯ブラシを使って磨いてやったら、最初は怖がってる様子もあったものの、慣れれば気持ち良かったらしく、今ではすっかりお気に入りらしい。手渡してやると自分でも磨くことができる。
だが、密、刃、伏をはじめ、子供達にも歯磨きはしてやったんだが、電動じゃない歯ブラシでなら磨かせてくれるものの、電動歯ブラシは怖がって使わせてくれなかった。これは翔も同じだ。鷹が電動歯ブラシで歯を磨いてると、何とも言えない様子で離れて見てることもあった。いわゆる<ドン引き>状態って感じだろうか。
ちなみに歯磨き粉は使わない。人間のようにうがいや口をゆすいで水を吐き出すという習慣がないからか、そのまま飲み込んでしまう可能性があったから使わなかったんだ。実際、それで正解だったようだ。歯磨き粉を使わずに磨いた後でゆすがせようと何度か試してみたが、結局うまくはいかなかったからな。
で、今も、子供達の中では唯一電動歯ブラシを使って歯磨きする光及び、以前よりは警戒しなくなったシモーヌと並んで電動歯ブラシで歯磨き中だ。シモーヌが俺に色目を使ってないのがようやく理解できたものと思われる。別に仲良くとは言わないがケンカ腰でいられるのも困りものなので、この変化は非常にありがたい。
なんにせよ、鷹と光とシモーヌの三人が並んで電動歯ブラシで歯磨きをしている光景は、微妙なシュールさもありつつ微笑ましいものとも言えたのだった。
あ、そうそう、それからこれは余談だが、コーネリアス号の装備品に、ブランゲッタ(フライングカーペット機構)を備えた<ヘリ>もあったものの、それについてはどこか致命的に故障しているのか動作する様子がない。現在も順次メンテナンスを続けて復旧を計ってるものの、いつになるのかそもそも使えるようになるのかまるで不明である。
そちらが使えるようになると行動範囲が飛躍的に伸びると思われるが、まあ、あまり期待しないで気長に待つことにしよう。




