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思い出話 伏 その2

<猫っぽさ>という意味では実はようしょうの方が圧倒的に上なんだが、ふくにもそういう部分はかなりある。特に甘える時の仕草が猫っぽい。骨から肉を剥ぎ取る為のざらっとした舌で俺の顔を舐めたりもする。毛繕いをする時にはブラシ代わりにもなるその舌だが、素肌を何度も直接舐められると結構痛い。目に見えないくらいの細かい傷ができるんだ。だから一方的に舐められないように、俺は敢えて彼女の首筋に軽く噛み付いたりする。甘噛みだ。


するとふくは俺に屈服したように力を抜く。その時の様子がまた色っぽい。今でもそうだ。と言うか、ますます色香を増してる気もする。五人も子供を生んでもプロポーションも殆ど変わらない。ぐうたらダラダラしてるように見えるのに、その体は引き締まってしなやかだ。ちなみにひそかは『柔らかい』、じんは『すべすべ』、ようは『ピチピチ』って感じかな。


皆、引き締まってるんだけど、その引き締まってる中でも微妙に感触が違うんだ。これは何とも興味深い。俺も元々女性を知らない訳じゃなかったが、さすがに人間の女性とは筋肉の密度が違う感じかな。男の俺が全力でかかっても、体格的にはローティーンって感じのようにすら力比べでは全く敵わない。ようが俺を押さえ付けて求めてきた時に抵抗してみたんだが、まるで歯が立たなかった。


その時にも、この<群れ>の中じゃ俺が最弱なんだなと実感したよ。


まあ、そもそも野生相手に力比べするのが間違ってるのかもだが。


と、いかんいかん、ふくの話だな。


とにかく彼女は、歳を経るごとに女っぷりが充実してるんだよな。だからその誘惑に負けないようにするだけでも一苦労だ。既に五人生まれてるってことは、遠慮なしにやったらそれこそ更に五人くらい生まれそうな気がする。さすがにそれはマズイ。大いにマズイ。今でも子供らのことを失念しそうになってるというのに完全にキャパオーバーだ。


野性ならそれこそ雌に丸投げして任せてしまえばいいのかもだが、俺自身の矜持として納得できないんだよ。『くだらない拘り』と言われればその通りだとしても、なんか、な。


俺はふくが好きだ。大切にしたいと思う。もちろんひそかじんようも同じように好きだ。人間社会ならそのうちの一人に選ばなきゃいけなかったんだろうが、『選べ』と言われたら逆に誰も選ばなかったかもしれない。いや、『選べない』んだ。だから身を引いてた可能性もあると思う。誰か一人を選ぶくらいなら誰も選ばない。これだって立派な<選択>じゃないかな。


『男らしく』はないかもだが……



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