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思い出話 密 その2

(ほまれ)(ひかり)を産んで<母親>になってからの(ひそか)は、一気にたくましい感じになったと思う。当然か。子供を守り育てる必要があったからな。もっとも彼女の場合は、俺もいるしエレクシアやセシリアもいたから、普通に野生の中で育てるよりは相当楽だったかもしれないが。


それでも、今だから触れるが、(ほまれ)が生まれて最初の一ヶ月くらいは俺にまで歯を剥き出して威嚇するくらいに気が荒くなっていた。これも母親として子を守ろうという本能のなせる技だろう。子供が生まれると奥さんが人が変わったようになると嘆く男は多いが、その意味をしみじみ実感したよ。


もっとも、俺はそれすら『可愛いな』と思ったけどな。そうやって必死に我が子を守ろうとしてるんだ。その賢明さが可愛かったよ。


俺は人間嫌いで他人に期待しないようにしてたこともあってか、自分の思い通りにならないこと自体はそんなに気にならなかった。ただ、他人の都合に合わせるということを俺がしないからか、距離を置かれることは多かったな。別にそれを恨んじゃないかったが、あれほど周囲に人間が溢れてるのに、もしかすると今より、いや、間違いなく今より孤独だった。完治する見込みもない妹の世話を続けてたことも、


『治る見込みもないのに苦しめるとか酷い奴だ。早く楽にさせてあげるべきだ!』


とも言われたな。


って、いかんいかん、ただの愚痴になってる。


まあそんなこんなで人間社会に嫌気がさしてヤケクソ気味にエレクシアを手に入れてヤバいところにも借金作ってそれを返す為に惑星(プラネット)ハンターになって、普通のところから借りたらもうとっくに返済が終わってるくらいに払ったことに気付くと途端に虚しくなって、何もかも終わりにしようと夢色星団に飛び込んだりしたんだよな。


でも、(ひそか)にとってはそんなこと、何も関係ないんだよなあ。彼女はただ俺を俺として必要としてくれてるんだ。


(ほまれ)におっぱいをあげてる(ひそか)


(ほまれ)と一緒に家の屋根に上って寛いでる(ひそか)


(あらた)を産んだ時には危うく命を落としかけた(ひそか)


(ほむら)(あらた)の二人を抱えて居眠りしながらおっぱいをあげてた(ひそか)


今、俺の隣で甘えるようにして体を摺り寄せて寝てる姿も、本当に『可愛らしい』。出逢ったばかりのことに比べるとずっと大人っぽくなったけど『可愛い』ぞ。


『母親になったら可愛げがなくなる』だって? それは自分がそういう女性を選んだだけじゃないか。俺が選んだ彼女は今でもこんなに可愛い。


人間みたいに労ってもくれないし、三つ指揃えて頭も下げてくれないし、三歩下がってついてきてくれる訳でもないが、こんな可愛い<嫁>はそうそういないと胸を張って言えるね。



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