子供達(みんな元気でやってくれてる)
走と凱に引き続いて翔まで巣立っていったことで、俺は正直、一抹の寂しさを覚えていたりもした。本来ならもっとこう、ドラマティックな別れみたいなものを、期待というまでではないにしろ『そういうのがないのかな~』なんて心のどこかでは思っていたのに、ホントに俺の子供らといったら揃いも揃ってドライと言うか何と言うか……
お父さん、泣いちゃうよ!?
というのは冗談だとしても、実に呆気ないものだなと思い知らされるよ。いや、むしろ人間がそういうのに意味を持たせようとしすぎなのかもしれないけどな。彼ら彼女らにしてみればホントに当たり前の営みに過ぎない訳で、それでいちいち盛り上がらなきゃならない理由がないんだろう。
でもまあ、みんな元気だから良しとするか。
「本当は心配なんですね…」
タブレットで、俺と一緒に走や凱、翔、そして誉、深、明、來の様子を見ながらお茶を飲んでいたシモーヌがそう話しかけてきた。
「まあね…」
図星を突かれてぐうの音も出ない。本音ではみんな俺の傍にいてもらって楽しく暮らしていければと思ってる。けど、やっぱりあいつらとは違う。その違いを認めないと、俺はただの我儘な暴君のような存在になってしまうだろう。エレクシアという、それを可能にする<力>も持っているからな。ここではどんな相手でも彼女の前では赤ん坊のようなものだ。力尽くで従えようと思えばできてしまう。
だが、俺は、それは違うと何度も自分自身に言い聞かせる。ここでは俺の方が<異物>なんだ。精々後七十年ほど、長くても百年くらいでいなくなる。そんな俺がこの世界をしっちゃかめっちゃかに引っ掻き回すことは避けたいんだと。ついついそうしたいと思ってしまいがちな俺自身に。
それで言えばそもそも俺が子供を残してるのも駄目なのかもしれないけどさ。でも、だからこそ俺の子供達もちゃんとここの慣習に従って生きて行ってほしいから好きにさせるんだ。あいつらの方が俺よりよっぽど分かってるはずだし。
「私達はここではある意味孤独なんですね……」
「そういうことになるかな。だからついつい、ハーレムなんか作ってしまったりしたんだよ」
苦笑いを浮かべながら言った俺に、シモーヌは微笑みながら、
「なるほど…」
と言ってくれた。そんな俺とシモーヌを、エレクシアは静かに見守ってくれている。
不思議だな。俺はエレクシアを一番頼りにしてるのに、シモーヌが来てからはこの種の話はついついシモーヌにしてしまう。そこの辺りはやっぱり人間とロボットの差ってことなんだろうか……
でもエレクシアは、ヤキモチを妬くこともなく俺を守ってくれるんだよな。ロボットだから……