立て続けに(当然と言えば当然か)
「走くん…凱くん……」
帰ってから一眠りした後、コーネリアス号から持ち帰った電磁調理器や洗濯機をエレクシアの力を借りて新しい家に据え付け、私物もウォークインクローゼットに仕舞いつつ、シモーヌは二人の名前を呟いた。自分が一緒に行ったからこんなことになったのかと気にしているらしい。
だがそれは関係ない。彼女だって本当は分かっていると思う。しかしそれを割り切れないことがあるのが人間という生き物だ。
「心配だったらタブレットであいつらのことを見られるし、シモーヌも見守ってやってくれ」
片付けを手伝いつつそう言った俺は、これもコーネリアス号から持ち帰ったタブレットを彼女に渡した。シモーヌのアカウントとパスワードで使えるようになったからな。
俺の方の機器と直接リンクはできないものの、逆にコーネリアス号に装備されていた備品との親和性は高いし、何より、コーネリアス号自体のAIとリンクができるのは大きい。
「走くんと凱くんを見せて」
シモーヌがそうタブレットに向けて声を掛けると、コーネリアス号のAIとリンクしたそれが、船体の陰で休んでいる走達の姿を映しだした。この時はまだ、重症の三人は治療カプセルの中だったこともあって、走と恵と凱と、他には若い雌が三人、寄り添い合うようにして眠っていた。船体に掴まったドローンのカメラで見てるので、ローターの音で睡眠の邪魔をすることもない。
それを見て、彼女もホッとしたようだった。
などと、とんだ<里帰り>ではあったが、シモーヌとしても心配事はありつつある意味では気持ちの区切りになったらしい。
その日からますます<お隣さん>として俺達の生活に溶け込んでいってくれた。
と、シモーヌの方はそれで一段落ついたとして、実はその日から翔の姿が見えなくなっていた。と思うと、ドローンがその姿を捉える。密林の木の枝に掴まり、羽を休ませている様子が見られた。
「そうか…お前もか……」
そうだ。翔も巣立ったのだ。まったく一言もない巣立ちではあったが、まあ仕方がない。
彼女はクモ人間に襲われたことを覚えているのか向こう岸へとは行こうとしなかった。だから後はカマキリ人間とヒョウ人間にさえ気を付けていればおよそ大丈夫だろう。
体は小さいが、気高きハンターとしての風格は既に備えている気がする。結果として凱の巣立ちと時を同じくしたことで、先に彼女が凱をフッたことになるのかな。
先にパートナーを見付けてそれを決定付けたのは、凱だったけどな。
そして、翔の巣立ち後ほどなくして、鷹の妊娠も判明したのだった。