無謀(走のやつ、無茶をする)
この惑星の生き物達の情報については随時更新されてるので、取り敢えず現時点で分かってる情報に基いて話をしていく。
で、ライオン人間も決して弱い訳ではないが、群れの規模が基本的に十人前後と小さく、それでいて個体の戦闘力がほぼ互角となると、群れ単位でぶつかり合っては不利な相手だった。オオカミ竜の方も普段はライオン人間と直接ぶつかることは滅多にないものの、獲物が捕えられず飢えるとライオン人間を襲うことすらあるのは事実である。
走と凱は、その争いに巻き込まれてしまったらしい。
「くそっ! こんな時に…!」
と思わず声は漏れたものの、この世界ではこういうことは日常茶飯事の普通の出来事だ。たまたまそれに俺の子供達が出くわしてしまっただけに過ぎない。
グンタイ竜の襲撃を経験しそれを撃退した走と凱は、幼いなりに逞しくなっていて、オオカミ竜を相手にしても怯まず挑みかかっていた。
しかし、同じように若く体が小さい個体が相手なら互角でも、大きな成体が相手だとやはり不利だった。
その中で、一人、また一人と、ライオン人間が倒されていく。しかもボスまでも。何頭もを同時に相手にしてはさすがに抗しきれなかった。
どうやらオオカミ竜は群れごと食い尽くすつもりのようだ。だから最も手強いボスを集中的に攻撃しまず仕留めようと思ったらしい。逆に言うとそのおかげで走と凱はまだ無事だったということだ。そこに、
「走様! 凱様!」
と声を上げ、メイフェアが乱入する。
走と凱に襲い掛かっていたオオカミ竜をそれぞれ一撃で打ちのめし、「逃げて!」と手を振る。だが、凱は逃げようとしたものの、走はその指示に従わなかった。それどころかまたオオカミ竜の群れに挑みかかっていく。そこには、走が気に入っているらしいライオン人間の若い雌がいた。彼女を助けようとしているのか。
その雌がいる限り素直に逃げないと察知したメイフェアは、先にそちらを救い出した。すると走も助け出された雌を導くようにコーネリアス号の方へと走り出した。
本来ならそれ以上手出しはしたくなかったんだが、その群れは走と凱が世話になってる群れだったから、
「メイフェア、オオカミ竜を追い払え! もし死なせても責任は問わない!」
と改めて指示した。
「了解!」
短くそう応え、メイフェアはオオカミ竜を捕らえては大きく投げ飛ばした。軽く二十メートルは吹っ飛んだだろう。そして次々と同じように捕らえては投げ飛ばす。エレクシアには勝てなくても、水中でワニ人間相手に泥仕合を演じても、メイフェアにも本来この程度の芸当はできるのである。