お茶(何気にいろいろ作ってたりする)
シモーヌの存在を一番意識していたのは、実は鷹だったかもしれない。翔の巣立ちが近いのかまた俺に甘えるようになってきただけでなく、明らかに発情している様子も見せ始めていた。だから新入りのシモーヌが俺を横取りしないか気にしているんだろう。
ちなみに、翔の方はと言うと母親のことなどどこ吹く風で勝手に一人で行動している。そして時折、凱にちょっかいを出してきたりもする。だが凱の方は凱の方で、ただやられっぱなしになるばかりでもなくなってきていた。反撃はしないが、攻撃を躱すことも多くなってきたのだ。
これも、凱を鍛える役に立っていたということだろうか。ただまあ、明らかに自分より強い相手を前にするとヘタレるのは変わらないが。
しかし、翔を相手にしてやられっぱなしじゃなくなったのは、実はかなり強くなったということでもあると思う。
とまあ、それはそれとして鷹に話を戻すと、シモーヌが俺に近付こうとすると飛んできて、間に割り込み、彼女を睨み付けた上で「ギギギ」と威嚇音を発することもある。別にシモーヌ自身は俺に話を訊こうとしただけで色目を使ったりした訳じゃない。
この辺りは種族の違いなのでいかんともしがたいか。
そんな訳で、俺は鷹の相手もすることになっていた。しかも、翔ができた時よりも頻繁に求めてくる。それこそ三日に一回くらいのペースでだ。
これはひょっとして、雌として成熟度を増してきているということなのか?。見た目は相変わらず小柄で幼さも感じるんだが、そのギャップがまたなんとも。って、ゲフンゲフン。
ただ、俺に甘えてくれるのは悪い気はしない。気が向かなきゃ視線も向けないクセに、勝手な奴だよ。本当に猫のようだ。でもそこがまた可愛い。
そうして鷹の相手をした後で、宇宙船のリビングに戻りエレクシアが淹れてくれた<お茶>をいただく。というのも、お茶に似た植物が見付かって、分析してみるとこれが本当にお茶の葉とほぼ同じ成分を持っていて、セシリアがデータベースに残っていたお茶の製法を基に再現してくれたのだ。そうしてできたものが完全に普通の<緑茶>で、なんだか俺も嬉しくなってしまったりしたのだった。
贅沢を言わせてもらえばコーヒーの方もと思うんだが、今のところコーヒー豆に似たものは発見されていない。コーネリアス号に残されていたコーヒーももう少なかったからな。彼らも長い遭難生活で大事に飲んでいたんだろう。
食料関係の物資についてはほぼ底をついてる状態だった。
彼らの苦労がしのばれるというものか。