表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
170/2934

客人(取り敢えずはそういう立場で)

『それはもうあなたのものよ』


秋嶋(あきしま)シモーヌにそう言ってもらえて、(ひかり)は嬉しそうに絵本をぎゅっと抱き締めた。メンタリティがかなり野性寄りだからか普通の人間の子供ほど表情は豊かじゃないが、俺には不思議とそういうのが分かった。今のは確かに喜んでる表情だ。


今まで通り絵本を読んでていいと改めて承諾をもらい、さっそく絵本を持って密林に入っていく(ひかり)をドローンで追う。そこにはまた(めい)が待っていた。(ひかり)に絵本を読んでもらう為だ。


その姿をモニターで見ながら、秋嶋シモーヌは言う。


「ちゃんと家族なんですね……」


最初はドン引きしてた彼女も、俺達がまあまあ家族として上手くやってる様子を見て認めてくれたらしい。


俺は毎日、一時間ほど彼女と話をした。俺の知る限りのことを包み隠さず。もちろん不定形生物のことも。


映像で(はるか)のことを見た時には、「私と同じ…!?」と驚いていた。


俺がいない時間には、メイフェアとモニター越しに喋っているらしい。厳密にはメイフェアはJAPAN-2(ジャパンセカンド)社の所有物であり(所有権が失効している可能性もあるものの)、本来優先するべきは(ほまれ)よりも彼女なんだが、やはり透明な体の彼女について、本来の秋嶋シモーヌとの同一性を確定させることができないらしい。メイフェアとセシリアの言う『秋嶋シモーヌに間違いありません』とは、あくまで『秋嶋シモーヌに極めて近い姿と記憶を持っていることに間違いありません』という意味でしかない。


法律的な解釈では、彼女はやっぱり<別人>ということなのだ。


それでも、メイフェアとセシリアは彼女のことを『秋嶋シモーヌとして』接してくれる。法律的な解釈とは別に、な。


たとえロボットでもその辺りの融通は利くのである。


人間以上に、人を人として扱うことが徹底してるからな、彼女らは。どんなロクデナシでもダメ人間でも彼女達はきちんと人として扱ってくれるぞ。まあ、中にはエレクシアの前のオーナーのように少々ひねくれたのもいて、敢えて冷淡な対応させるカスタムが施されたのもいるが。


いや、そんなエレクシアを必要としてる俺も大概か。


まあそれはさておき、こうして俺達の群れの<客人>として秋嶋シモーヌ、いや、シモーヌが加わることになった。


(ひそか)(じん)(ふく)(よう)はどうも彼女のことを警戒してる(ヤキモチ込み?)ようだが、その辺も少しずつ慣れていってもらえばいいだろう。そもそも俺は別に彼女とどうこうなるつもりもない。彼女にはフィアンセもいた訳だし、赤ん坊のこともまだ割り切れないだろうからな……


それでも、彼女にはちゃんと人間としての心があるらしい。だったらいくら体が透明でもそれを人間として扱うことに俺としても何の異論もなかったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ