再びの(おいおい。まさか、またなのか?)
人間の技術というのは大したもので、この宇宙船の周囲は、雷雲との間で大きな電位差が生じないように常にコントロールされた半径数十メートルの目に見えない、触れることもできない<壁>で覆われており、物理的に雷が<落ちることができない>ようになっているのだ。
大気圏内を飛行中に落雷の被害を受けないように宇宙船に備えられた機能である。
宇宙船に限らず、一般的な住宅にも備えられているこの技術自体は、もう何千年も前にできたものなので俺達人間にとっては当たり前のものだし、正直、この中にいる限りは落雷に見舞われる可能性は無いため、大きな雷鳴に驚かされることはあっても俺達人間はもう雷を恐れることはあまりない。
とは言え、密達にはそんなことは理解できないだろうし、子供達は単純に大きな音が怖くて部屋の隅で体を小さくしたり、俺やエレクシア、セシリアにしがみついたりして怯えていた。
ちょっと可哀想なんだけど、でも可愛いなあ。
「よしよし、大丈夫だ。ここにいたら大丈夫だからな」
大人しそうに見えて割とワイルドなところもある光でさえこの時ばかりは普通の子供のようになる。俺の体にしがみついて、固く目を瞑って震えている。普段はあまり見られない姿に顔が緩んでしまっていた。
いやいや、家族が怖がってるんだから喜んでてどうする…!
でも、やっぱり可愛い……
なんてことを思っていた時、突然、メイフェアから通信が入った。
「連是様! お願いがあります!」
切羽詰まった感じの声に、俺は、誉の身に何かが起こったのかとギョッとした。彼女は普段、あいつの警護をしてるからな。だが聞いてみると、そうではなかった。
「ただいま、人間の悲鳴と思しき音声を捉えました。生命の危機にあるものと思われます。私も現場に向かっていますので、支援をお願いします!」
「支援だと?」
「はい、私の方では完全な保護ができません! 錬是様の方で保護をお願いしたいのです!」
なるほど、そういうことか。しかし俺は、それ以上に、メイフェアが酷く焦っているようなのが気になってしまった。
「了解した。こちらで受け入れ態勢は整えておく。エレクシアを派遣するから彼女に引き渡してくれ。
しかしメイフェア。どうした? 何を焦ってるんだ?」
そう告げた俺に、彼女は信じられないことを口にしたのだった。
「あの声は、秋嶋シモーヌのものに間違いありません! 彼女が危機に陥っているんです!! 私は今度こそ彼女を助けたい!!」
な…! なんだとお……っ!?