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密のこと(人間に合わせてみるともう)

何だか最近すっかり影が薄くなってしまった気がするので、ここらでまたちゃんと(ひそか)についても触れてやろうと思う。


以前にも言ったが、(あらた)が生まれた時の経験がよっぽど衝撃的だったのか、それとも三人(本当は四人だが)も子供ができて満足したのか、(ひそか)が最後まで求めてくることは殆どなくなっていた。(あらた)が生まれてからももうそれなりに時間は経ってるのにな。


今でも(じん)(ふく)との相手でほぼ毎日のように<お勤め>があるからむしろそれは助かってるし、体をすり寄せて甘えてくるのは今でもあるから別に嫌われてる訳でもない筈なんだ。


ただ、以前に比べると落ち着いた雰囲気も醸し出してる気もする。(ほむら)(あらた)がセシリアやエレクシアの頭に登ったりして「うおーっ!」と叫ぶとやっぱりすっとんできて押さえ付けたりするものの、その時の様子も(ほまれ)に対してやってた時ほどは歯をむき出して怖い顔でもなくなって気がするのは、俺の思い過ごしなのかね。


「なあ、(ひそか)……俺と一緒にいて幸せか…?」


いつものように庭のチェアで寛いでた俺に、体をすり寄せて甘えてきた時に何気なく聞いてみると、俺の言葉の意味を分かってるとはさすがに思わないが、まるでそれに応えるように柔らかい表情を見せるようになったのは紛れもない事実だったと思う。


もしかすると、年齢的なこともあるのかもな。出逢ってからだと既に約七年。子供達の成長速度などから見ると、ざっと二・五倍くらいの早さで年齢を重ねていってる感じだろうから彼女にとってはもう、十八年くらい経ってる感じかもしれない。


出逢った頃が大雑把に言って人間にとっての二十歳くらいだったと仮定するなら、三十八歳くらいになったってことかな。


しかも、老化抑制措置を受けた人間の場合は、成長が止まるまでは従来とほぼ変わらないものの、それ以降は老化の速度が遅いので、三十八歳なんて肉体的には二十歳と何も変わらない。百歳になってようやく、老化抑制措置を受けてない人間の三十過ぎくらいだと聞いたことがある。


そういうことも勘案して今の人間の年齢に換算すると、百歳を過ぎた辺りか。俺と同年代? そりゃ落ち着く訳だ。


あと、綺麗になった……気がする。


よく見ると睫が長くて、シュッとしてて、美人…なんだよな。イメージからするとずっと<可愛い>って感じだと思ってたんだが、いや、普通に<美人>だろ、これ。


しかも、やっぱり(ひかり)にも似てるんだ。ちゃんと母娘なんだなと実感した。


ただ同時に……


『俺が…見送ることになるよな……』


そうだ。俺自身は既に老化抑制処置を受けている。怪我や病気さえなければ少なくともまだ七十年くらいは生きることになると思う。


(ひそか)だけじゃなく、(じん)(ふく)(よう)も、見送ることになるんだよな……



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