埋葬(という程のことでもないが)
エレクシアもメイフェアもボノボ人間の言葉をある程度は理解していたという衝撃の事実を知る形になって、俺はエレクシアと一緒に一旦家に帰った。
あの時、メイフェアの動きを止めたのは、誉が「やめろ!」と一喝したからだった。『秋嶋シモーヌ(の姿をした女王)を守りたい』という気持ちを優先しようとした彼女だったが、仮にとはいえ現在の主人である誉の命令には逆らえず、自分の気持ちと命令との処理が追いつかずオーバーフローを起こして動きが止まってしまったという訳だ。
つまり、エレクシアに自分をわざと壊させて俺から与えられた命令を履行できなかったという状況を作り出すことで動きを鈍らせようとしてたのに、自分にそれが降りかかってきたという形だな。皮肉なことに。
もっとも、その辺りにおいても実は<技術の差>があり、命令が履行できなかったりすると一瞬とはいえ動きが止まってしまうこともあるメイフェアに対し、エレクシアはその辺りの対応も進んでいて、完全に動きが止まってしまうことは滅多にないそうだが。
結局、メイフェアには最初から万に一つの勝ち目もなかったということか。
しかも、ボノボ人間の言語が分かってたということは、昨夜、誉がメイフェアに何か叱責する感じで声を掛けてたのは、まさにその通りだったという訳だ。
びっくりだよ!
…まあいい。とにかくグンタイ竜の件は片付いたんだ。これでまたしばらくはのんびりできるだろう。
そして夜、今日は刃の相手をすることになって、俺は宇宙船に二人で籠ってた。
で、刃の相手をしてる間にエレクシアがグンタイ竜の死体を埋めてたんだが、その時点ではもう、他の動物に相当食われたらしくて結構数が減っていたそうだ。
ただ、女王の死体は岩の中に隠れていたからかそのままで、エレクシアはまず女王の死体を丁寧に埋葬してくれた。
せめてもの弔い…かな。
体が大きかったから穴も当然大きなものになったが、要人警護仕様のメイトギアにとってはこの程度の穴掘りはどうということもない。
それから、働きアリと言うか兵隊と言うかのグンタイ竜の死体を埋めることになった。
しかも、刃が満足してうっとりしててくれた時にタブレットで俺もその様子を見ると、エレクシアが作業している横に見慣れた人影が二つ。
「…ちゃっかりしてるなあ…」
思わずそう声が出てしまう。そこにいたのは、深と弦だった。二人してグンタイ竜の死体をガフガフと貪り食ってたのだ。まあ、二人だけじゃなく、昼間にはボクサー竜が現れて貪り食ってたらしいがな。