衝撃の事実(そうだったのか!?)
あの時どうして誉が現れたのかということの種明かしをすると、実は縄張りを接していた群れが突然姿を見せなくなったことで、縄張りを拡張する為に、あいつが属している群れのボスに斥候として送り込まれていたというのが理由のようだった。だから実は、割と近くであいつは寝ていたのだ。それで騒ぎで目が覚めて駆け付けたと。
「昨夜は申し訳ございませんでした……」
様子を確かめる為にメイフェアに会いに行った俺とエレクシアの前で、彼女は泣きそうな顔で深々と頭を下げた。やはり彼女にも分かっていたのだ。自分のしていることがまともじゃないのを。それでも、秋嶋シモーヌの姿をした女王を見ると、『もしかしたら』という気持ちが抑えられなかったのだろう。
昨夜の血まみれの状態から密林の中で水で洗ったのか、血は洗い流されていたがどことなくうっすらと汚れたような姿になっていた。その姿がどこか憐れで、俺はまったく怒る気にはなれなかった。
「仕方ないさ。同じ姿をしてたらな……お前にもエレクシアにも大きな破損はなかったんだ。それでいい。
お前も今度また、セシリアと一緒にコーネリアス号に里帰りした時に綺麗にメンテナンスを受けてきてくれ」
そう言った俺に彼女はいっそう深く頭を下げて、
「申し訳ございません……」
と謝っていた。
まあでも、それはもういいとして、少し気になったことがあったので、メイフェアに訊いてみた。
「それにしても、誉はどうしてあんなところにいたんだ?」
と尋ねた俺に、縄張り拡張の件を話してくれたのだった。しかも、
「それにしても昨夜は、何だか誉と会話してるみたいだったな」
などと冗談めかして言うと、
「はい、ある程度はおっしゃってることは分かります」
と。
「…マジか…?」
「はい」
いや、確かにメイトギアには言語学習能力もあるとは聞いてたよ? データにない言語であってもしばらく話を聞いているだけで解析できるという機能があるとは。だからって、まさかボノボ人間の言語まで解析したって言うのか?。
「エレクシア…そんなことできるのか?」
俺が思わず尋ねると彼女も、
「はい。ある程度までは解析できています。語彙は非常に少ないですが、人間の赤ん坊が意味のある単語を口にし始める頃のそれに似た体系の言語ですね」
「って! そんなこと聞いてないぞ!?」
「マスターが尋ねませんでしたので」
「…ぐ…!」
なんてこった……エレクシアも密達の言ってることがある程度分かってたということか?
まあ確かに、俺も何となくニュアンス的に察することはできてたからそういう意味では意思疎通できてたし、別に翻訳してもらう必要もなかったから確かに訊かなかったんだが……
なんかこう、微妙に納得いかないな……