対戦(やはり、こうなるか)
エレクシアが捨てたショットガンやバックパックが落ち、真下にいた数匹のグンタイ竜の上に落ちて下敷きになったものもいた。
群れは既に大騒ぎだったが、エレクシアとメイフェアには何の関係もなかった。エレクシアが地面に降り立つと同時にグンタイ竜が襲い掛かるものの、彼女は軽く手を振るだけでそれらをはたき落とし、脚や胴に噛み付くものは構いすらせず好きにさせた。対物ライフルの銃弾でさえ貫通できない彼女のボディには、獣の爪や牙などそれこそ玩具以下のものでしかない。
そのエレクシアの前にメイフェアも降り立ち、当然のようにこちらにもグンタイ竜は群がった。とは言え、エレクシアとは二千年の技術差があっても、対弾対刃対爆性能の点では既に十分以上の性能を持つメイフェアにも、グンタイ竜の攻撃など子供がじゃれついてる程度のものでさえなかった。
エレクシアはポケットからナイフを取り出して構え、メイフェアもそれに備える。普通のナイフ程度では要人警護仕様のメイトギアには何の脅威にもならないが、あくまで女王を駆除する為のものである。
人間のように見合って相手の出方を窺うこともなく、エレクシアは動いていた。すると彼女の脚などにまとわりついていたグンタイ竜がまるで自動車にでも撥ねられたかのようにはじけ飛ぶ。まさに降り積もった雪の中で戦っているかのように、グンタイ竜のことなど新雪をかき分けるが如く蹴散らしていく。
それは当然、メイフェアも同じだった。メイフェアはあくまで<秋嶋シモーヌの姿をした存在>を守ることが目的であり、それ以外の個体など眼中になかった。この辺りはやはりロボットということだろう。守りたい対象以外には実に冷酷だ。
女王に向かって走ろうとするエレクシアに、メイフェアは果敢に挑みかかった。
だが、この戦いが始まる前にエレクシアが言った、
『性能の差を見せ付けて差し上げます』
の言葉通り、運動性能の差は歴然としていた。この辺りはまた、人間の俺の目には捉えきれなかったので、後で映像を解析したことで分かった流れで説明していこう。
掴みかかるメイフェアの体が一瞬で天地逆さまになり、地面へと叩き付けられる。それでもメイフェアは足をエレクシアの体に絡みつかせ、振り切られることを阻止、すぐさま上体を起こして組み付こうとした。
しかしエレクシアはその腕を取って再び振り回す。と言っても、それは手加減されたものだった。俺が、『メイフェアを傷付けるな』と命令したからだ。
ただ、この二人の闘いに巻き込まれたグンタイ竜は、自動車同士の衝突事故に巻き込まれた歩行者のように酷いことになっていたがな。