接敵(さて、いよいよだ)
メイフェアXN12Aがどういう対応に出るかという不安はあったが、取り敢えず今回はあくまで<威力偵察>であり、もし彼女が妨害してくるようであれば最終的な対処については今後の課題ということにして、予定通りエレクシアには出てもらうことにした。
その間、俺は、伏の相手をすることになる。エレクシアに大変なことを任せてる間に俺は他の<嫁>とイチャイチャすることになるので非常に後ろめたいと言うか申し訳ない気分にはなるのだが、これも<嫁>達の精神衛生上必要な対処なのだと自分に言い聞かせて伏と共にベッドに入った。
幸い、エレクシアが状況を確認しつつゆっくりと<グンタイ竜>の拠点へと向かったこともあり、彼女のカメラでそれが捉えられるようになる頃には伏も満足してうっとりとまどろんでくれてたが。
何と言うか、実にスリリングな<愛の時間>だよ。まったく。
まあそれはさておいて、俺は、タブレットでエレクシアから送られてくる映像を確かめつつ見守った。
「グンタイ竜の拠点を現認しました。視界の範囲内だけでも総数は千を超えています。また、卵の数も三百は越えているでしょう。先日の襲撃の際の規模に戻るまであまり時間的な猶予はないと思われます」
無線でタブレットと繋がっているイヤホンからエレクシアの報告が聞こえてくる。
人間の目ならほぼ暗闇にしか見えないところでも、僅かな光を増幅して見ることのできる彼女のカメラなら昼間と大差ない映像で確認することができた。一応、奴らも夜は休むから今は動きも活発じゃないが、それでも監視役なのかいくつかのグンタイ竜は動いていて、周囲を窺うような仕草も見せていた。
とは言え、数百メートル離れたところから見ているエレクシアにはさすがにまだ気付いていないようだ。
「メイフェアXN12Aは近くに来ているか?」
俺が問い掛けると、
「はい、現在、二時の方向、三百メートルの位置にて待機しています。こちらの出方を窺っているものと思われます」
やはり、か。本気で秋嶋シモーヌの姿をした女王を守る気なんだな……
メイフェアXN12Aの<気持ち>も考慮はしてやりたい。だが、グンタイ竜をそのままにはしておけない。取り敢えず今回の威力偵察で女王がどういう行動に出るか、知性のようなものが見られるのかどうか、コミュニケーションが取れるのかどうかを確認しよう。話はそれからだ。
ただ同時に、気になることもあった。メイフェアXN12Aのいる位置だ。エレクシアの報告通りなら、誉がいる群れの縄張りからは五百メートル以上離れてる筈なんだよな。