表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

137/2934

茫然(いや、いくらなんでもそれはヒドイだろ)

こいつらがどういう形で交尾して繁殖してるのかはこの際どうでもいい。だが問題は、このサイズでこの異常な繁殖力だ。働きアリのようにせっせせっせと作業をしてるグンタイ竜(グンタイ)の中に、時折、一回り以上大きい個体が見える。もしかすると、(きょう)のように<前線の指揮官>的な存在かもしれない。


と思うと、その大きな個体を先頭に、十匹くらいのグンタイ竜(グンタイ)の集団が密林の中に消えていくのが分かった。そして別の方向から、鳥や小動物を口に咥えた集団が現れる。なるほど極めてアリに似た生態だな。


それを確認し、俺はエレクシアに命令した。


「じゃあ、すまないが今夜、行ってきてくれるか?」


あらかじめ言っておいた通り、今回はあくまで<威力偵察>が目的だ。群れにちょっかいを掛けてどういう反応をするのかを確かめ、十分に今の装備で対処できるならそのまま駆除し、何か問題がありそうならいったん撤退してどう対処するかを検討するというのが今回の作戦だった。夜行性である(ふく)達以外が寝付いてセシリアだけでも手が足りる夜に決行してもらう。


だがそれを確認した俺達のところに、通信が入る。メイフェアXN12Aだった。


錬是(れんぜ)様、お願いがあります…!」


ロボットでありながらどこか焦っているかのようなその声に、俺はただならぬものを感じていた。


「発言を許可する。なんだ?」


やや形式ばった形で応えた俺に、メイフェアXN12Aは思いもよらないことを言ってきた。


「今回の駆除作戦を、中止してください。いえ、作戦はいいのですが、<彼女>は助けてください…!」


…<彼女>…? 彼女って、なんだ…?


一瞬、言っている意味が頭に入ってこなくて戸惑っていた俺に、メイフェアXN12Aは改めて言った。


「間違いありません…! 彼女は…彼女は秋嶋(あきしま)シモーヌです……!」


「……は…?」


「あの透明な個体は、秋嶋シモーヌに間違いありません! 彼女を助けてください!」


…な…! あ…!?


ようやく意味が理解できた俺は、言葉も出なかった。『透明な個体』、つまり、あの女王らしきアリ人間(アリ)っぽいのが、<秋嶋シモーヌ>だと!? コーネリアス号乗員の…!?


いやたしかに、あの不定形生物が人間そのものを再現できる可能性があるんじゃないだろうかとは思ってたよ? でもまさか、こんな形で、だと…!?


まあ、あの形でキメラが出来上がるのなら、人間の形質の部分はコーネリアス号の乗員の遺伝子が使われるのかもしれない。にしたって、これは……


あまりのことに、俺は、タブレットに映し出される<透明な体の女性>の姿を、ただただ茫然と見詰めていたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ