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凶(こいつ、イカレてやがる…!)

ボスと思しき透明な個体は、エレクシアが見付けて対処していた筈だが、すぐに姿を隠してしまったらしい。その時点で俺が彼女に命じて容赦なくそいつを倒していればその後のピンチはなかったのかもしれない。しかし今はもういい。


それより、本来なら、完全に形勢が逆転した時点で撤退するのが道理だろう。今のままじゃいくらやっても戦力を損耗するばかりで、再度形勢逆転の目があるようには思えない。何しろ、明らかに襲い掛かってくるボクサー竜(ボクサー)の数が減ってきている。奴らも息切れしてきてるんだ。


なのに、あの透明なボスらしき個体は逃げようとはしなかった。これまでであれば、撤退していたはずなんだが……


紛れもない憎悪の表情を浮かべて俺達の方を睨み付けているそいつから受けた印象は、まさに<(きょう)>という感じだった。だから俺はそいつを(きょう)と呼ぶことにした。


カメラの映像の中の(きょう)は、身じろぎもせず真っ直ぐ前に視線を向けていた。それが不意に、カメラの方にギロリと視線を向けた。カメラ越しではあったが、はっきりと目が合った。


『こいつ……完全にドローンカメラを意識してる……?』


さすがにカメラというものを理解してるなんてことはないとしても、ドローンが俺達のものであることは少なくとも理解してるのかもしれない。


そして(きょう)は、おぞましいほどの邪悪な<笑み>を浮かべて、笑みのように見える形で牙を剥き出して、一瞬でカメラの前から姿を消した。


「ギィッ!!」


鋭い金属音のような声が響き、俺は思わず窓から外を見た。そこには、密林から弾かれるようにして地面を転がる(めい)の姿があった。その(めい)に、(きょう)が襲い掛かるのを俺は見てしまった。


「め―――――!」


俺が『(めい)!』と叫ぶよりも早く、彼女の体はバネのように跳ねあがって、(きょう)に向けてカマを伸ばしていた。


普通のボクサー竜(ボクサー)なら一撃で叩き伏せる彼女の攻撃を、(きょう)は後ろ足で弾いて躱したようだった。早すぎてはっきりしたことが俺には見て取れなかったのだ。


ここから後は、事が終わってから改めて映像を分析して初めて分かった流れで説明していく。


攻撃を弾かれた(めい)だったが、すかさずもう一方のカマを伸ばして(きょう)を捕えようとした。しかし(きょう)は更にそれさえ弾いて高く跳び上がり、ぐわっと口を大きく開けて彼女の頭に食らいつこうとする。頭は特に固いから牙が通ることはないとしても、目だけは別だ。牙が目に当たれば、最悪、失明だってするかもしれない。


だが驚いたことに、(めい)はそれを躱そうとするどころか、自分から頭を突っ込むような動きをした。頭突きだ。カマキリ人間(カマキリ)の武器は、決して両手のカマだけじゃない。ヘルメットのように硬くて頑丈なその頭は、デカい鈍器と同じだったのである。



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