モニカとハートマン編 無理じゃない延命
正直、未来が生まれたばかりの頃には、まだ十年くらいは大丈夫だと思ってた。いや、たぶん、実際に十年くらいはもってもおかしくないと思う。
だが、刃の場合もそうだったが、強大な捕食者であればこそ、肉体の衰えはそのまま命に直結する問題なんだろうな。
<上位捕食者>でいられなくなるということは、それ自体が<死>を意味するのかもしれない。
それでなくても、密の最後のような状態で生き延びるのは忍びないというのも確かに思う。
だから無理な延命はしないが、同時に、<無理じゃない延命>であればとも思ってしまうな。
<治療カプセル>を用いた<全身メンテナンス>だ。
光と灯が今も若々しくいられているのも、そのおかげが大きい。
そんなわけで、來に治療カプセルでの全身メンテナンスを受けてもらうべく、久利生、灯が、來と未来をローバーに乗せて、コーネリアス号へと向かった。
「やほ~!」
事前に連絡は入れていたからビアンカとルコアが出迎えてくれて、灯がいつものように明るく挨拶する。
「いらっしゃい」
「いらっしゃい……」
ビアンカとルコアに迎えられても、來の方は愛想よく応えたりはしないが。
慣れない場所に連れてこられて、來は警戒しきりだった。最近ではあまりべったりじゃなくなったはずが、未来をしっかりと抱いて離そうとしない。
まあ、当然か。
その一方で、未来の方は興味津々のようだ。
「おっ! おっ! おお~!」
などと声を上げて興奮している。
で、早速、來に治療カプセルに入ってもらおうとしたんだが……
「ルルルルルルルッッ!!」
得体のしれないところで得体のしれないことをされそうになって、來は完全に警戒態勢に入ってしまった。
「大丈夫だから。痛いこととかしないから。寝てる間に終わるから」
灯が必死に説得するが、まるで聞き入れてくれない。そりゃそうだよな。
密や刃や伏や鷹は、俺と一緒に暮らしてたことで慣れていたものの、來は基本的に巣立ってからはずっと野性として生きていたからなあ。
「鎮静剤で眠らせてからにするか?」
モニカが抱えるタブレット越しに俺が提案するものの、久利生は、
「いや、正直な話をさせてもらえば、そこまでして貴重な医療用ナノマシンを浪費するのはどうかと個人的には思う。何より彼女がそれを望んでいないのなら、無理にメンテナンスを受けさせるのもどうかなって気がするんだ。彼女の望むとおりにさせてやりたい」
と告げた。
それを受けて灯も、
「ここまで言ってダメだったら、私もそれでいいかなって思うよ」
納得した様子だった。
ビアンカも、
「そうですね」
と、少し悲し気な様子ながらも言った。
けれど、その中で、ルコアだけが、
「そんな……」
不満そうに口にしたのだった。




