甘々（か～っ！ やってらんねぇぜ）
などと余談が長くなってしまったが、とにかく深が一目惚れしてしまったヒョウ人間の雄を、俺は弦と名付けて様子を見ることにしたのだった。
が、何と言うか、あれだな。見てる方が馬鹿馬鹿しくなるくらいに甘々だな。
弦に合わせて木に登り、お互いに顔を舐め合ったり体を舐め合ったりで毛繕いをして、スリスリと体を擦り付け合ってまあお熱いこと。
って、それは伏の甘え方でもう分かってたことか。
ただ、これほどまでにイチャイチャしてるというのに、弦は、深に対して交尾には及ぼうとしなかった。まあその辺は、本能に従ってるからこそ逆に妊娠可能になってない深に対してはそこまで発情しないということなのかもしれないな。タラシのクセに意外と紳士だな、弦。
本来は草原を生息地とするライオン人間でありながら、ラブラブな彼氏である弦に合わせて樹上を移動するようになった深は、ボクサー竜の脅威についてはあまり心配しなくて済むようになった。誉に合わせて家の中を立体的に遊びまわっていたのがひょっとすると役に立ったのかもしれない。もしそうなら、決して意図していなかったことだが結果的には深にとってプラスの経験になってたということなのだろうか。
ここに人間の社会を築くつもりはなく、もちろん開発や開拓をするつもりがないから、自然にあまり干渉しないように決めたからその点で言えば少々好ましくないのかもしれないが、かといってガッチガチに四角四面に考えたら俺がここで生きてること自体が駄目ってことにもなりかねないし、その辺は適当に曖昧にしておこう。だいたい、ここに法律も基準もない以上は、干渉するもしないも俺自身の自己満足でしかないしな。
基本的には、子供達がちゃんと野生で生きていければそれでいいんだ。
もう何年もここにいるからか、密や誉の種族であるボノボ人間達も俺の存在そのものをさほど気にしなくなってるようだし。縄張りが隣接する群れの子供達が物珍しそうに木の上から見てることはあっても、大人達が集団で偵察のように見に来ることはなくなっていた。俺もここに馴染んだということかね。
そんな感じで、誉も深も、着々と巣立ちの準備をしているということで後はもう、俺としては見守るしかない感じかな。
だからこれからしばらくの間は、刃の娘の明について触れていこうと思う。
