カップリング(う~む。この辺りは人間の感覚とは)
治療カプセルから出た深には、やはり少し傷跡が残ってしまった。肩口の辺りに体毛が生えてこない部分が残ってしまったのだ。と言っても、当の深自身がそれを気にしてる様子はないが。
それよりも、例のヒョウ人間(雄)のことがよっぽど好きになったのか、勝手に密林に入って会いに行ってしまうようになった。
年齢は四歳半を過ぎたところ。体格的には人間の十一歳前後相当という感じなので何気にヤバい絵面にも見えなくはないが、それはあくまで人間の感覚での話だろう。彼女らは本能に従って行動してるから、お互いに相手が受け入れてくれるならそれでいいんだろうな。
ちなみに、ライオン人間やヒョウ人間の場合、雄に暴力的に迫られたからといって大人しくしてるほど彼女らはヤワではないので、気に入らない相手に迫られたところで受け入れたりはしないみたいだけどな。下手すると襲った方が咬み殺される例だってあるだろう。つまり、レイプはほとんど存在しないと思われる。
となれば、深がその気ならカップリングもありえるということか。とは言え、まだ妊娠が可能な状態ではなさそうだから、むしろ相手がその気にならない可能性もあるな。それでも、今のうちにツバをつけておいてというのもあるのか?
この辺も、人間の俺にはピンとこない感覚だな。
なお、現在は人間の健康寿命が既に二百歳を超えており、しかも百歳を過ぎる頃までは自然妊娠も可能であり、胎児の遺伝子疾患の治療も可能な為に、小児性愛は非常に厳しく禁じられている。十六歳未満との性交は、合意のあるなしに関係なく強姦扱いとなり、最高で終身刑もありうる重罪だった。
ただし、小児性愛者も今なお一定数は存在する為、そういう者達の代償行動として、それ用のロボット(一般的にはラブドールと称される)もあてがわれている。ラブドールは人間の制御しがたい性衝動を受け止める為に<治療>を名目に製造される<医療器械>の一種であり、その中には幼い子供の姿をしたものもあるという訳だ。外見上では全身義体の技術を応用してほぼ人間と区別がつかないくらいに非常に精密に作られており、故にそういう形で贖えるにも拘らず人間の子供に手を出すような奴にはそれこそ厳しい罰をということだな。
でもまあ、ラブドール自体が非常に理想的な存在として作られているので、それで満足しない<患者>はほぼ存在しないそうだ。
また、余談ではあるが、<セックス依存症>等の診断が出れば保険適用が受けられて定価の三割程度で購入できるラブドールを、敢えて治療関係なしに購入する人間もおり、一般向けにも販売はされている。あと、規制が厳しくなった性風俗店の代わりにラブドールを使ったそういうサービスを提供する店が、現在は主流である。こちらはまあ、個人で購入する余裕のない人間向けといったところか。
性的搾取の問題は、人間の長年の懸案だったそうだからな。