刃（嫁三号ということ…か？）
で、その後、俺が＜刃＞と名付けたカマキリ少女がどうなったかと言うと……
「また来ていますね。距離は二〇メートル。樹上からマスターの様子を窺っています」
とエレクシアが言う通り、遠巻きに俺達。いや、俺のことを監視してるようだった。
だが、その所為で危険を察知したのか、代わりに密が姿を見せなくなってしまった。せっかく懐いてたのになあ。
などと少し残念に思いつつも、刃のことも気になってはいた。
「何が狙いだと思う？」
「捕食が狙いであればわざわざ私が傍にいるマスターを執拗に狙うメリットがありません。現に、私が確認できただけでも、鳥や小動物を捕食しているのは確実ですので、他の目的でしょう」
「ってことは？」
「密と同じくマスターに興味があるのだと推測するのが妥当ですね」
「だよな～」
俺は本来、付き合うなら大人のセクシーな女性の方がいいんだが、別に十代の女の子に好かれるのも悪い気はしない。しないが、命の危険を感じるのはさすがにねえ。
そんなことも考えつつ、俺はエレクシアと共に調査を続けていた。三日が過ぎても刃が付きまとってるせいか密が姿を見せる様子はない。そろそろ駄目かなと諦めかけたその時、俺の視界の隅を真っ白な影がよぎるのが見えた。
「密！？」
思わず声を上げたが、エレクシアが言った。
「いえ、違います。彼女とは別の個体ですね」
「なに！？」
密以外の個体ということは、やはり仲間がいたのか。
まあ当然だろう。明らかに攻撃性も低く、刃のような強力な武器も持たない密のような生き物は群れを作って協力することでしかこういうところでは生き残れない筈だし。
だがその時、エレクシアがさらに言った。
「刃が離れていきます。いえ、先程の、密の同種を追っているようです」
「なんだと！？」
俺の背筋を嫌な予感が走り抜けた。密も狙った刃が、密の仲間を追う理由。
「刃を止めるぞ！」
そう言って走り出した俺にエレクシアは言う。
「ですが、これ以上はこの星の生態系への干渉となります。よろしいのですか？」
「確かにそうだろうが、俺一人が干渉したところで大した影響がある訳じゃないだろ！ だいたい、入植可能な惑星を探してる時点で生態系への干渉も何もないもんだ！」
まあそういうことだ。
刃にしても生きる為に狩りをしてるのは事実だろう。しかし、獲物は密やその仲間じゃなくても大丈夫なのも分かってる。
だったら、俺のこの身勝手な行動だって大した問題じゃないってもんだろ。
