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出会いと始まりの高校生活

 春それは桜が舞う出会いの季節。

 新しい制服に身を包み新たな気分と共に私立遊志学園高等部の校門に足を踏み入れていく人の中、一人だけ立ち止まって校舎を眺めている学生がいた。


 「俺はついに戻ってきたんだこの場所に」


 後藤玲緒(ごとうれお)は、柄にもなく感慨更けていた。


 「よしッ! じぁあ行くとしますかッ!」


 玲緒はそう言うと新しい世界に足を踏み込んだと同時に周りの学生達はいきなり玲緒から距離をとった。


 「ちっ、またこれかよ」


 後藤玲緒は学生とは思えない位高く、銀のネックレスやピアスをつけており長い前髪は片目を隠し、隠れてない目は全てを凍てつかすような目をしているためよく不良に間違えられる。


 「はぁ~、別に髪も真っ黒で染めてるわけでもないし、威張り散らしてるわけでもないのに見た目で判断しやがって」


 ぶつぶつ何かを言っていた後藤は、前が見えておらず反対向きに歩いていた人に気づかずにぶつかってしまった。


 「おっ、悪いな大丈夫か?」


 転んだ相手に手を差し伸べた後藤だったが、ぶつかった相手はそれを無視して立ち上がり、校舎の方に向きを直して行った。


 「はぁ? なんだよあいつは」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 校舎に入り自分のクラスである三教室に入った後藤は、すぐに自分の席を見つけ座っていた。


 「たぁっく何だったんださっきの奴は、ぶつかっておいてなにも言わずに行きやがって」


 後藤はまだぶつかった相手にイラついており今朝の清々しい気分は、どこかに消えていた。


 「あれ、もしかして玲緒?」


 急に自分の名前を呼ばれ周りを見ると隣の席に座っている奴がこちらを見ていた。


 「あっ、やっぱり玲緒だ。俺のこと覚えてるか?」


 後藤は最初、何言ってんだこいつと思っていたが驚くほど白い肌と死んだような目の下にある泣きボクロには見覚えがあった。


 「・・・・・・もしかして奈津斗か?」


 「覚えてくれていたんだね。嬉しいよ」


 自分の名前を覚えてはくれていたことに鈴木奈津斗(すずきなつと)はとても嬉しそうだった。


 「当たり前だろ。オレと奈津斗は友達なんだからな」


 「ありがとう。それにしても三年ぶりだね、アメリカはどうだった?」


 ここ私立遊志学園高等部は、中高一貫で後藤は最初の一年はここに通っていたが中学一年の後半、親の都合によりしばらくアメリカで暮らしていた。

 鈴木奈津斗とは中学一年の時からの付き合いで思いの外話が合うことから友達になっていた。


 「あぁ割りと楽しかったぜ。オレの好きなダンスも磨くことができたしな」


 奈津斗とそんな他愛もない会話をしているうちにSHRの時間がきていた。

 チャイムがなり先生が教室のドアを開けて入ってきた。


 「そこのえっーと徳井、号令を頼む」


 急に当てられたのにも動じず徳井は、号令を掛ける。


 「よーしみんなそろってるな?」


 「すいませーん、先生ちょっといいですか?」


 「んっ?どうしたんだ徳井」


 先程号令を掛けた徳井が早くも手を挙げていた。


 「おれの隣の席の人がまだ来ていないんですけど?」


 クラスのみんなが左隅の方を見ると確かに席が空いていた。


 「そこの席は前田か。今日は休みなのか?」


 ガラガラと教室のドアを開けて入ってきたのは先程、後藤とぶつかったあいつだった。


 「前田!入学式当日に遅刻なんてたるんでいるぞ!」


 先生が怒っているのに前田は平然としていた。


 「すみません。道に迷っていたので遅れました」


 さすがの先生も呆れていた。


 「まぁいい席につけ」


 前田はテトテトと自分の席まで行った。


 「ほんとになんなんだあいつは」


 前田はクラスの中でただ一人マスクをつけておりその目はとても眠そうだった。


 「玲緒、あの人と知り合い?」


 どうやら奈津斗には聞こえてたらしく先生に聞こえない声で聞いてきた。


 「いや知らねーよ」


 そして後藤達はSHRを終え入学式を迎えたのであった。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 入学式も終え、玲緒達は自分のクラスに戻っていた。


 「ったく、校長の話マジでなげーな」


 「まぁまぁそんなにカリカリしないでよ」


 今日はきっといい一日になると思っていた玲緒は、腹立つ事の連続でかなりストレスを溜めていた。


 「そうだ! 玲緒は部活何するか決めた?」


 少しでも玲緒のストレスを減らそうと奈津斗は話題を変えてきた。


 「俺はダンス部に入るつもりだぜ。奈津斗はどうするんだ?」


 奈津斗はうーんと腕を組み考えていた。


 「オレは帰宅部にするよ。特にやりたいこともないしさ」


 そうか。と玲緒は素っ気なく返しすと、教室のドアが開き先生が入ってきた。


 「おーい席につけ、HRを始めるぞ」


 騒がしかった教室内は静まり返り徳井の号令のもとHRが始まった。


 「みんな入学式お疲れ様。今日から私がここ一年三組の担任になる小野京子おのけいこだ。これから一年、よろしくな」


 小野京子先生は、先程までスーツだったのにいつの間にかジャージに変わっており、ストレートだった髪も結んでいた。


 「では、まず最初に自己紹介をしてもらおうかな。中高一貫とはいえ初めての人だっているからな。・・・・・・さて誰からやってもらおうかな?」


 この流れは一番めんどいパターンだった。

 最初の奴で自己紹介のパターンが決まるこれだが最初の人は何を言うのか悩むため誰もが思った、最初だけは絶対にやりたくないと。


 「はいはーい、先生おれが最初にやりまーす」


 勇敢にも声を出したのは号令を出していた徳井だった。


 「おっ、積極的だな。よし徳井から左に回るように自己紹介をしていくか」


 玲緒は順番的にも真ん中ぐらいなのでちょうどよかった。

 「おれの名前は徳井紗紅とくいさく。趣味は体を動かすことで、部活は運動部に入ろうと思っているんでこれからよろしくっ!」


 紗紅はかなり顔立ちがよく、ザ・爽やか青年だった。


 「よーし次!」


 先程の紗紅と変わって前田はだらーっと立ち上がった。


 「前田啓(まえだはる)です」


 あまりにも素っ気ない自己紹介に周りはざわざわしていた。


 「まぁいいだろう次」


 ーーあれでいいんだ。


 たぶんこの瞬間初めてクラス全員の気持ちが一致した。

 クラス三十六人の自己紹介が終わり、小野先生の学校説明によりHRは終わり、これから始まる診断テストの準備をした。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 診断テストも終わり放課後、玲緒はダンス部の見学に行っていた。 


 「まぁそれなりに大きな学校だからなそこそこレベルが高かったな」


 部活動見学も終え玲緒は、家に帰るため教室に置いてある道具を取りに行っていた。

 三組の教室は東側にありダンス部の活動場所が西側にあるため移動にはかなり面倒だった。

 そんなことを考えながら歩いていくとドンッと玲緒に何かがぶつかってきた。


 「はぁ~、またお前か~」


 ぶつかってきたのは今朝と同じく前田啓だった。


 「おい大丈夫か」


 啓に手を差し伸べた玲緒だったが、啓は今朝と同じく無視して立ち上がった。


 「なんだよ先にぶつかってきておいてその態度は」


 玲緒の言葉にも無視して啓はあたりをキョロキョロ見ていた。


 「おいお前、何してんだよ」


 「・・・・・・わからない」


 それはこっちの台詞だった。


 「わからないって・・・・・・じぁあなんでこんなとこにいんだよ」


 啓はなにも答えずにダンス部の活動場所にテトテトと歩いていった。


 「ホントになんなんだよ」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 教室まで荷物を取りに来た玲緒は、これから帰ろうとしていた。


 「ふぅ~もう今日は帰って寝よ」


 玲緒が教室を出たときどこからかピアノの音色が聞こえてき、それはまるで木の葉の舞い落ちていくような爽やかな音色だった。


 「この時間にピアノの音ということは・・・・・・」


 ピアノの音が聴こえる音楽室まで五分もかからなかった。


 「ここのようだな」


 音楽室のドアを開けるとそこにはピアノを弾く奈津斗とそれを聴いている紗紅と啓がいた。


 「あっ、玲緒も聴きに来てくれたの?」


 たしかに聴きに来たのだがどうしても聞きたいことがあった。


 「どうしてお前らがいるんだよ!」


 玲緒は紗紅と啓を指差し怒鳴った。


 「いや、おれは奈津斗がピアノのが得意だって自己紹介の時言っていたから弾いてもらっていたんだけど」


 奈津斗も紗紅の言葉にうんうんと頷いていた。


 「じぁあお前はなんでいんだよ。さっきダンス部の方に行ってたじゃないか」


 「・・・・・・ピアノの音が聴こえたから」


 まさかの自分と同じ理由で来た啓に玲緒はなにも言えなかった。


 「まぁまぁ玲緒もそんなこと言わずにどこか座りなよ」


 奈津斗に言われたとおり音楽室に入り適当なイスに座った。

 玲緒が座ったのを確認して奈津斗はまたピアノを弾き始めた。


 「たしか玲緒だったよね、おれのことは紗紅って呼んでくれて構わないから」


 紗紅が隣まで来て挨拶してきたが玲緒は奈津斗のピアノを聴きながら今日のことを思い出していた。


 

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