後日「終局」
「ゆく川の流れは、絶えずして、しかも、もとの水にあらず」
「淀みに浮かぶ、うたかたは、かつ消え、かつ結びて」
「久しく、とどまりたる、ためしなし」
「世の中にある人と、すみかと、また、かくのごとし」
「鴨長明が現代に居たら、引き篭もりになってたかもしれないわね」
「あるいは、新興宗教の教祖かも」
「どっちにしても、世間に顔向けできへんね」
「お帰りなさい、会長さん」
「ボスからは、何を?」
「先週はご苦労さまっちゅう労いの言葉と、その後の五人についての話を聞かされた」
「一日目は、弁論部のかたでしたね」
「あの、演説マシンガンか」
「今のところ新入部員はゼロなんやけど、二人ほど見学者が来たそうや」
「事態は、改善に進んでるようですね」
「二日目の、写真部のほうは?」
「昼過ぎに、関瀬さん本人からも聞いたんやけど、市の広報誌の一面に写真が掲載されて、それを見た一年生の三人が、記入済みの入部届けを持って来たんやって」
「秋の文化祭での展示が、今から楽しみですね」
「期待が高まるね」
「待ち遠しいわぁ」
「あとは、三日目が調理部で」
「四日目が奇術部」
「二人に関しては、何も言うことないねん。ルナさんも、あっさり説明を端折ったし」
「まぁ、半分、解決したようなものでしたからね」
「五日目の映画部は、……思い出したくない」
「まぁ、そう言わんと」
「あのショート・ムービー、好評ですよね」
「あれから頻繁に撮影に付き合わされる、あたしの身にもなってよ」
「前にも増して、意欲を燃やしてるみたいやもんね」
「作風が変わったって、校内の話題に上るようになりましたよね」
「そもそも、何でボスは、あたしたちにこんなことをやらせたんだ?」
「それは、生徒会執行部が、いつも暇を持て余してそうやったから、悩みを抱えてそうな五人を探して来たんやって」
「それじゃあ、鳴尾先生のマッチ・ポンプだったんですね」
「自力で消してよ」
「まぁまぁ。おかげで退屈せぇへんかったんやから、結果オーライと違う?」
「そういうことにしておきましょうか」
「どうも、釈然としない」
「疑い始めたら、キリがあらへんよ? それより、これを見てほしいんやけど」
「もしかして」
「まさか」
「毎度お騒がせな、生徒指導部からの依頼状」
「もう、次の依頼ですか?」
「終わったところなのに」
「一難去って、また一難やね」