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異世界で、英雄譚をはじめましょう。  作者: 巫 夏希
第三章 スノーフォグ編
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第五十六話 シュラス錬金術研究所⑨

「それよりだな、情報はきちんと提供してくれるのだろうね?」


 ルーシーが僕も気になっていたことを代弁して、話してくれた。

 対してリメリアは豚肉のようなもの(おそらくハムか何かだろうか?)を豪快に口で引きちぎり、噛みながら笑みを浮かべる。


「当たり前だろ。掃除屋は嘘を吐かないものさ。ほら、それよりも食べないと冷めてしまうよ。それとも、冷めた料理が好きというのならばそれもそれで止めないけれど」

「あ、ああ……。そうだな。取り敢えず、頂くことにしよう」


 本来は僕たちが支払うお金で注文しているので、リメリアの言う通り僕たちが普通に食べていい食事になるから、『頂く』なんて表現は少々変なことになるのだけれど、実際問題、それは間違った話ではないということになる。

 そういうわけで、僕たちもまた食事に取り掛かるのだった。というか、それしか選択肢が残されちゃいなかった。

 食事について特筆すべき事項は無いと思う。だって、実際に食事シーンをつらつらと説明する必要もないだろう? しいて言うなら、肉料理まみれというのもバランスが悪い食事だということを再確認出来た、ってことくらいかな。リメリアは野菜が嫌いなようで、殆ど肉料理しか注文しなかった。だから僕は我慢できなくなって(のちに聞いたがルーシーとレイナもそう思っていたようだった)、サラダを注文した。そのときリメリアはサラダも食べるのか、と言わんばかりの悲しげな表情を浮かべていたけれど、そんなことはどうだっていい。というか、嫌いならば食べなければいいだけの話だ。僕は肉料理ばかりだとなかなか舌がリセットされないから注文しているだけだから。

 そんなことはさておき。

 料理を食べ終えたところでリメリアはメニューを取り出した。あれだけ食べられない量を注文したというのに、また何か注文するつもりなのだろうか? というか、まだ君が注文したものすべて食べ終わっていないのだけれど!

 そう僕が考えていたら、どうやらその視線に気付いたらしく、


「……何よ。デザートを食べようとしていただけじゃない」


 デザートまで所望するというのか。

 これは情報がそれなりのものじゃないと納得しないぞ。今日だけで懐がどれほど軽くなったと思っているのか。


「私が情報を持っていない、とかそんなこと思っているのならば安心しろ。きっちり私が持っている情報を提供してやるよ。無論、それがどこまで君たちにとって有益な情報であるかは、いざ話してみないと解らないことではあるがね」

「確かにそれもそうだが……。だからといって、それを理解していない僕たちでもない。掃除屋は実際の一般人以外で知っているような情報を仕入れているのだろう? 例えば……メタモルフォーズの住処、とか」

「……そこまで理解しているなら、話は早いじゃない。あ、バニラアイスパフェ一つ」


 いつの間に店員を呼んでいたんだ。

 そんなツッコミを入れようとしたが、それよりも早く注文を終えてしまったので何も言えなかった。情報が有益であるかそうでないかは、僕たちの情報分別能力にかかっている。




 パフェがやってくるまで五分、それから食べ終わるまで十分。合計十五分をさらに待機していた僕たちは、さすがに大量の肉料理を平らげていて、リメリアがパフェを食べ終わるまで待機していた。なぜそのまま待機しているかというと、逃げられる可能性を考慮していたからだ。逃げられてしまったら、このお金も無駄になる。……少々豪勢な食事をした、と割り切ってしまえばいい話かもしれないけれど。

 パフェをすべて食べ終わり、食後にサービスでやってきたホットコーヒーを啜るリメリアは、溜息を吐いて目を瞑った。

 そして少しして目を開けると、リメリアは大きく頷いた。


「……それじゃ、少々時間はかかってしまったけれど、食事をおごってもらうのが約束だったからね。私もその約束を果たさないと」


 紙ナプキンで口の周りを拭いて、リメリアは話を始めた。


「先ず、メタモルフォーズの住処について簡単に説明しようか。メタモルフォーズの住処、と言うけれど実はうまい特徴は見当たらないんだ。大抵場所は見つかっているけれど、……ああ、でも一つだけあったかな。その特徴、当たり前かもしれないけれど、人が少ない場所に住処はあるんだよ。それは当たり前だよね。メタモルフォーズは人間の敵だ。人間が逃げるか、メタモルフォーズを撃退するか、はたまたメタモルフォーズに返り討ちにあってやられてしまうか……そのいずれかだから」

「メタモルフォーズは、人間の進化形……それについて聞いたことは?」


 ルーシーはこの前、リーガル城であった出来事について質問する。

 リメリアは知った風な様子で答える。


「あれならば、スノーフォグならば常識だよ。逆に、ハイダルクではそれは知られていなかったのか? ……もしかして、ハイダルクだとメタモルフォーズが出現すること自体も少なかったのか?」

「そうかもしれないわね。メタモルフォーズはハイダルクでは殆ど発見されていない。この間の城へやってきたメタモルフォーズが初めて、なのかもしれない」


 正確に言えば、それよりも前に僕とルーシー、それにメアリーがエルフの隠れ里で出会ったのが最初になるけれど……それは言わないでおこう。


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