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異世界で、英雄譚をはじめましょう。  作者: 巫 夏希
第三章 スノーフォグ編
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第五十話 シュラス錬金術研究所③


 休憩がてら僕たちは宿屋の一階にあった喫茶店に居た。僕とルーシーはアイスコーヒー、レイナはそれに追加してミルクプリンパフェを注文していた。それにしてもこの世界にもプリンとかコーヒーってあるんだな……。


「それで。これからどうするんだい?」


 ミルクプリンを一口頬張って、レイナは僕たちに質問した。


「とにかく、先ずは宿屋の人から聞いた通り、商人に話を聞く」

「けれど、そう簡単に商人から話を聞くことが出来るとは思えないけれどね」

「……というと?」

「商人はけっこう疑心暗鬼になっている人間が多い、ってことさ。軍に助けてもらうことはせずに、わざわざフリーの傭兵を雇って警護させるほどにね。それでも、その傭兵も十分に信用はしていないけれど」

「……軍を、国を信頼していないということか?」

「スノーフォグはどうかはわからないけれど、少なくともハイダルクではそうだったよ。だから手を拱いていることも多かったのではないかな。同じ商人どうしならば競争原理が働いていたとしても同盟を組みたがるけれどね。国が介入して来たら競争原理が働かず、自分たちの思うようにいかない、と思っているんじゃないかな。まあ、私は商人じゃないから、そこまで確証をつかめた発言は言えないけれど」


 疑心暗鬼。

 もしレイナの発言がスノーフォグでも適用されるものであるとすれば、かなり厄介なことになる。

 商人たちの心をつかむ必要がある。

 レイナの発言は、僕たちのこれからの方向性を位置づけるに等しいものだった。



 ◇◇◇



 ラルースの北東に位置する商業区。

 そこは軍の庇護も通らない、自警団が町を警護している非常に特殊な場所だった。

 南門にいる兵士に通行許可を求めたけれど、武器を持っている人間は入ることを許さないということで、門前払いさせられてしまった。

 門前にある四阿にて僕たちは休憩しながら、どうするべきか考える。


「どうする? 武器を没収させられてでも入る場所ではないと思うのだが?」

「でも、情報を得たいのは事実でしょう? だとすれば、何か策があるはずなのだけれど……」

「そこで一つ、提案があるのだけれど」


 そういったのはレイナだった。

 レイナはチラシを一枚持っている。どうやら先ほどの南門でもらったものらしいのだが……。


「それで? そこにはいったい何が記載されているのかな?」

「ここにはこう書かれている。今度商業区が隊商を出すらしいんだよ。そんで、それはどうやらエノシアスタという町まで向かうらしいよ。エノシアスタは世界でも有数の巨大都市だ。ロストテクノロジーじみた旧時代の遺物をこれでもかと使った結果、魔術や錬金術とは違う『科学』が発展した町として有名になった町……といえば、さすがのフルやルーシーも知っているだろう?」


 正直知らなかったが、レイナが説明してくれたおかげで大体は把握することができた。

 そもそも。

 この時代を現代と呼ぶならば、偉大なる戦い以前の世界は『旧時代』と呼ぶ時代だった。そこでは今のような魔術や錬金術が発展していることはなく、科学技術の陰に隠れていたのだという。弾丸の雨も、旧時代のロストテクノロジーであったミサイルが何らかの理由で誤発射したことが原因だと言われている。

 今でこそ寂れているが、スノーフォグは世界一の技術立国だった。スノーフォグの王がそれを好むかららしいのだが、それはいまだにこの世界で科学技術が後退していかない要因になったともいえる。


「……その町は研究施設が多いらしいし、もしかしたらシュラス錬金術研究所の情報も得られると思うのだけれど、どうかな?」


 科学技術が発展している町ならば、確かにレイナの考えは正しいかもしれない。

 シュラス錬金術研究所が相当の秘密主義であったとしても、噂のような感じでその研究所について知っている人はきっといるだろうし、情報を得る可能性はそっちのほうが高い。

 だったらそこへ向かったほうがいい。

 僕はそう思って、レイナの言葉にこたえるように――強くうなずいた。





 南門。

 僕は兵士にそのように言った。言った、といっても簡単なことだ。ただ、隊商の警備をしたいといえばいいだけのこと。

 そういうことで僕たちは商業区の一番奥にある管制塔へと向かうことになった。

 管制塔を囲むように家屋が軒を連ねており、それが商業区の長の家であった。


「……して、君たちがその警護を行いたいと立候補した者か?」

「はい」


 目の前に立っている、大きな男が商業区の長だった。

 大きな、というのは何も身長だけではない。肥満体ということで、横に大きいことだってある。まあ、そんなこと口が裂けても言えるわけがない。もし言ってしまったら、その瞬間牢屋に叩き込まれることだろう。


「しかし、子供三人が、ねえ……。できるのか? 武器も弓と剣とダガー……。どこか心もとない気がするのだが」

「それについてはご安心ください。僕たちはラドーム学院に在籍していた学生です。現在はいろいろな理由がありまして旅をしているのですが……きっと商業区長様が求められている人材であると理解しています」


 ルーシーはそう言いながらも、恭しい笑みを浮かべている。

 僕とレイナもそれに同調するようにうなずいて、笑みを浮かべた。


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