エピローグ
「……というわけで、一人の少女を愛した勇者は、一人の少女が愛した世界を守るために自らを犠牲にしましたとさ」
「ええー! それでおしまい?」
「何だか悲しい物語だねー!」
おじいさんの紙芝居を聞いていた子供達は、各々感想を述べていく。
しかし誰もがその物語を、悲観的なものだと述べていた。
「そうだろう。そう思うかもしれないな。しかし、悲しい物語かもしれないが、忘れてはいけない物語なのだよ」
子供達にお菓子をあげながら、おじいさんは告げた。
子供達はお菓子を貰って、頭を下げて、走って行く。それぞれまた別の遊びをするのだろう。
子供達の心に残るかどうかは分からない。
しかし、その物語を語り継いでいくことこそが――彼の役目だと思っていた。
勝手なことかもしれない。もしくは、『彼』がこの広い宇宙のどこかで見ているかもしれない。
しかし、それでもおじいさんは今日も物語を語り継ぐ。
彼――フル・ヤタクミが繰り広げた、英雄譚を。
「或いは、そういう役目を持ってして生き残ったのかもしれないな……」
おじいさんは笑みを浮かべながら、片付けを開始する。
「手伝いますよ。おじいさん」
声が聞こえたのでそちらを向くと、彼の孫が立っていた。
「おお。済まないな、シルバ。いつも手伝いに来てくれて」
「いいんですよ。それが……おじいさんの役目なら、それを手伝うこともまた、『勇者の仲間』の子孫たる僕の役目なんですから」
「……そうか。ありがとうよ、シルバ」
そうして、二人で片付けを開始した。
空はまだ明るかったが、少しだけ星の輝きが見えていた。
広い宇宙のどこかで――フルが見ている。
そんなことを、彼らは忘れられないまま、彼の英雄譚を語り継いでいくのだろう。




