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異世界で、英雄譚をはじめましょう。  作者: 巫 夏希
第二部第三章 収束する世界と追憶編
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第二百七十二話 虹の見えた日②

 ストライガーはなおも話を続ける。


「そもそもの話、キガクレノミコトは私のような人間を最初から迎え入れるつもりだったらしいのよ。けれど、あなたの思っているとおり、キガクレノミコトはとても変わった神ですよ。ずっとはるか昔からこの人間の世界で神として存在しているようだけれど。あのような容姿でも、使徒の中で一番古参の存在だったのよ、キガクレノミコトは」

「キガクレノミコトが……?」


 何となく想像は出来ていたけれど、実際聞いてみると理解に乏しいものがある。

 しかしながら、キガクレノミコトはどうして使徒という存在になっているのだろうか。あの風貌はどこか懐かしさを感じる。もちろん、キガクレノミコトと僕ははじめて出会ったわけだけれど。


「ええ。キガクレノミコトは、この世界を一万年以上……いいや、彼女の話が確かならばそれよりもはるか昔から、人間とともにあったと言われています。きっと彼女がこの世界から離れると決めたのは、この世界を守りたいから……。私は、そう思っています。直接彼女から聞いたわけではありませんから、細かいところはなんとも言えませんが」

「キガクレノミコトはこの世界を守って欲しくて……?」


 この剣に、力を託したというのか。


「ええ、そういうことですよ。あなたがどう思っているかは別として……、キガクレノミコトの思いも少しは汲んでもらうことは出来ないでしょうか?」

「お父さん、何やっているのー! もう準備出来たって!」


 僕とストライガーの会話は、一花の言葉で強制的に終了せざるを得なかった。

 しかし、それは同時に攻撃準備が出来たということと等しい。


「了解。それじゃ、もういつでも放てるということだな」


 僕の言葉に、一花は頷く。

 ストライガーも僕の言葉と一花の反応を見た後に頷くと、やがてゆっくりと歩き始めた。

 オリジナルフォーズはまだ動きを止めていない。ジャパニアへとゆっくりと侵攻を進めている。

 つまり、ジャパニアへ最小の被害で攻撃をするには、今しか無い。


「発射用意――――!」


 そして。

 砲台から一斉に砲丸が撃ち放たれた。



 ◇◇◇



 虹は綺麗だった。

 七色で構成されるそれは、見るものを圧倒させる。

 そして、その虹の美しさに目を奪われるものは、そう少なくない。



 ◇◇◇



 オリジナルフォーズの背後にずっとあった虹に、僕は違和感を抱くべきだった。

 その虹が徐々に動いていること、そして変化をしていることについて、僕は直ぐに気付いておかなければならなかった。


「……待て、あの虹。何か、変わっていないか?」


 変わっている、というのは姿が変わってしまっている、という意味だ。

 でも僕以外にそれに気付いた人間はおらず、砲撃が止まることは無かった。

 そして、放たれた砲丸はすべてオリジナルフォーズの前方に展開された虹のシールドにはじき返される。落下していく弾丸は、ジャパニアの住宅街へと落下し、家々を破壊していく。


「虹がはじき返した……?」


 そして、虹は分解を開始する。

 巨大な輪の構成だったそれは、幾つもの細分化をしていき、やがてたくさんの盾ができあがった。

 その盾は仄かな光を放っていた。

 いったい何を始めるのか、僕は注視していた。

 しかしながら、ストライガーは違う指示を兵士達に行う。


「次の砲撃準備を進めろ! 大急ぎだ。少なくとも、敵が攻撃を始める前に!!」


 間に合うはずが無かった。

 刹那、虹の盾から光の筋が大量に撃ち放たれた。

 その軌道はすべて正確に兵士の心臓を貫いており、貫かれた兵士は血を出すことも苦しむことも無く、そのまま倒れていった。

 僕はとっさにシルフェの剣を構えて、思い切り回転切りを行う。

 すると、僕の想像通り――正確には二千年後の未来で僕が実際に経験した出来事として記憶しているのだけれど――バリアが僕の周囲に張り巡らされた。

 その範囲はちょうど僕と一花を守るくらいのサイズ。二人を守るくらいならばこれくらいで十分だ。

 しかし、倒れていく兵士たちを誰一人守ることが出来ない。それもまた事実だった。


「……まさか、こんなことが!」


 兵士が、人々が、町々が。

 虹の盾から放たれる光線により、破壊されていく。


「不味い、不味い、不味い……。どうすればいい? このままではたくさんの人間が……」


 ストライガーにもどうやら手の打ちようが無いようだった。

 僕もバリアはどうやらこの範囲までしか放つことが出来そうに無い。

 ならば、どうすれば良いか――。


「分かったよ、お父さん」


 そこで僕たちに声を掛けたのは、一花だった。

 一花はじっと真っ直ぐ、僕を見つめている。その目は強い意志を持つ目だ。



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