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異世界で、英雄譚をはじめましょう。  作者: 巫 夏希
第二部第三章 収束する世界と追憶編
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第二百六十四話 偉大なる戦い・決戦編㉙

 三人目――リーナの左隣に座っている白いワンピースの女性は、ただこの状況を見つめるだけだった。静観している、とでも言えば良いだろうか。そんな状態だ。だから、僕はひどく不安になっていた。実際、この三人と僕たちは共闘するわけであって、三人の意見は少なくとも合致していなければならないだろう。

 では、今、この状態は?

 二人は少なくともストライガーの作戦に同意してくれそうだ。しかしながら、三人目の女性――そういえば名前はまだ聞いていなかったか――は、まだどうするか手を倦ねているようにも見える。

 それははっきり言ってどっちつかずの状態だし、不安な状態といえるだろう。


「……一つ、よろしいでしょうか」


 そんなことを考えていたら、案の定、彼女が質問をしてきた。


「……何でしょうか、メリッサ」


 メリッサ。そういう名前なのか。覚えておこう。きっと何かの機会で彼女に出会うこともあるだろう――なんてことは余談だ。あまり考えないほうが良いかもしれないが、しかして名前を覚えておくことは大事なのでそれは仕方ない事だと思う。

 それはそれとして、メリッサは笑みを浮かべて、すっと指を差した。

 その先にあったのは――僕?


「私はそんなことなんてどうだっていいのですよ。その子供が神の啓示を受けていようと、受けていなかろうと。それが戦争の解決に直結するかしないかは、いざやってみないと分からないのですから。けれど、問題はあなた。誰にも指摘されるまでもなく、誰からも言われるまでも無く、しかしながら自分から話に入ってこようとしないあなた。あなたはいったい何者?」


 僕のことを、どうも気にかかっていたようだった。

 そう思う彼女の気持ちも十分理解できる。致し方ない事だと思う。

 だが、けれど。

 結局の所、それは議題のすり替えに過ぎない。

 物事の根本的な解決には至っていない。

 それをメリッサも理解しているはずだ。けれど、理解していたとしても、それを前に進めることなんてそう簡単にできる話じゃない。

 そしてそれもまた、メリッサは理解しているのだろう。

 ならば、どうして、回りくどい話から始めたのか?


「……ねえ、あなた、話聞いているの?」


 メリッサの言葉を聞いて、僕は我に返る。

 けれど、メリッサの言葉に、僕はどう答えればいいのか分からなかった。

 それはメリッサの言葉が分からなかったから?

 違う。

 それはメリッサの言葉を受け入れたくなかったから?

 違う。

 それはメリッサの言葉を聞いたところで、何も変わらないと察したから?

 違う。

 では――どうして?


「彼は今回の戦争において、キーパーソンとなる存在と言ってもいいでしょう」


 僕の代わりに答えたのはストライガーだった。

 ストライガーの言葉に、当然メリッサは首を傾げる。

 まるで『そんなこと知ったことでは無い』と言わんばかりに。


「キーパーソン? まさか、この何も知らないような少年に、リーダーを頼むと?」

「ええ。間違っていますか?」

「ええ。大いに間違っているね。それでもやるというならば仕方ないけれど、少なくとも私はこいつをリーダーとは認めない。実力もあるかどうか分からない新参者に」

「おいおい、そんなことを言ったら誰がも新参になるだろう」


 ところが、僕をフォローしてくれる存在が居た。

 それは、グランズ。まさかそんなことが起きるとは思っていなかったので、どうやって乗り切るべきか考えていたのだが――。


「グランズ、貴様……この男の肩を持つと?」

「別にそういうつもりは無いさ」


 期待していた気持ちをばっさりと切り捨てられてしまった。

 では、どうして僕をかばったのだろうか。


「俺は傭兵上がりだからかもしれないが、上には従うというのが絶対のルールだ。だから、仮に上が何も知らねえ真っ白な人間だって構わない。それはこちらがルールを教えてやりゃあいいし、だからといって遊ぶことも出来ない。遊ぶ、というのは……簡単に言えば上のルールを無視する、ということだな。それをするとどうなるか、答えは簡単だ。飯が食えなくなる。そういう職業であればあるほど、猶更な」


 彼がどういう職業だったのか、それは僕も知らなかった。

 ストライガーは知っていたのかもしれないけれど(案外、それを考慮した上での人選だったかもしれないが)、いずれにせよ、僕はこの三人をこれからまとめられるだろうか。はっきり言って、とても不安だ。


「……あなたがそう言うならば、仕方ありませんね」


 そして。

 案外あっさりとメリッサも納得してしまった。何というか、もっと何かあるのではないだろうか――なんてことも考えたけれど、まあ、それはあまり掘り返さないほうがいいだろう。話がややこしくなると、非常に面倒だ。


「話がまとまったようですね。それじゃ、修一さん。お願いしますね」


 ストライガーから強引にバトンを投げられてしまった。

 と同時に、グランズたちの目線が僕へと移る。まいったな、注目されるのはあまり得意では無いのだけれど、ほんとうにストライガーも人が悪い……あ、でも彼女は神様に近い存在だったか? だから、人の常識が通用しない、とか。

 そんなことを考えつつも、僕はどうにかこの状況を打破しようと思い、ゆっくりと立ち上がった。

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