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異世界で、英雄譚をはじめましょう。  作者: 巫 夏希
第二部第三章 収束する世界と追憶編
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第二百六十三話 偉大なる戦い・決戦編㉘

「……奇跡?」


 グランズから発せられた言葉は、ストライガーの言葉を信じきれていない、懐疑的なものだった。

 やはり、いくら使徒であるストライガーの言葉であっても『奇跡』という単語自体には引っかかるか。まあ、それは当然のことかもしれない。奇跡という単語自体、意味として滅多に起きないことという意味が付与されている。ならば、ストライガーの発言は奇跡を故意に作り出そうということだ。

 ストライガーの話は続く。


「きっと私の言葉を聞いて、意味が分からないと思っているのでしょうが、そう思っていただいて構いません。けれど、問題は幾つかあります。その中でも一番なのは……いかにして彼女は奇跡を生み出すのか? ということについてです」


 もっとも根幹であり、誰もが気になることを唐突にぶっ込んできた。ストライガー、お前はいったい何を考えているんだ……!

 と、一人勝手に緊迫していると、リーナが声をかけた。


「……奇跡を信じるとでも言うのかしら? 仮にもあなたたちはこの国の神と呼ばれる存在だったはず。そんなあなたたちなら、奇跡を作り出すことも容易なはず」

「奇跡を作り出すことも容易……ですか。だったらいいですねえ、だったら」


 しかしリーナの言葉にストライガーは臆することなく、ただ呟いただけだった。

 それを聞いたリーナは普段と違うと思ったのだろうか、或いはこれは不味い状態だと思ったのだろうか、いずれにせよ、彼女は慌ててその場を取り成した。


「あ、いや! 確かに奇跡を作り出すのは容易とは言ったが、あなたたち自身の存在を否定したつもりはないわよ。それによってあなたたちがどうなるか、それは私たちにも充分理解出来ていることだもの」


 持ちつ持たれつ。

 まさにその言葉がぴったりといった関係だろうか。

 いずれにせよ、この世界においての神と人間の存在及び関係性は理解出来ていないのだけれど、まあ、まだ知らなくていいのかもしれない。知り過ぎるのも良くないし、知らな過ぎるのも良くないけれど、


「……さてと。随分と話が逸れてしまいましたが、話はまだ序盤もいいところです。これからをどうすればよいのか? それについて、話し合わねばなりません。最悪…….我々の末路も占う必要もありましょうから」


 末路。

 縁起でも無い言葉――とも思えるかもしれないが、今の僕たちにとってその言葉は現実めいた言葉といってもいいだろう。

 いずれにせよ、それを理解していた人間がどれほどいただろうか、ということになるのだろうけれど。まあ、間違っている解釈をしている人間は、きっとこの場にはいないだろう。


「……とにかく、この戦争をどうするか、だろう? けれど、さっきストライガー、あんたが言った通り、オリジナルフォーズには弱点が無いんだろ? だったら、こちらから攻撃を与えることなんて出来ない。いや、正確には大量の攻撃をずっと与え続けるしか無い。体力ゲージが可視化でもされてりゃ楽かもしれないが、そんな甘くは無い。いったいどうやって切り抜けるつもりだ?」

「……そりゃあ、決まっていますよ」


 そう言って、ストライガーは一花を指差した。


「だから、話を戻す……そう言ったはずでは?」

「何を言っているんだ。まさか、ほんとうに……」

「ええ。その通りですよ。彼女の祈りの力は本物です。それを証明する術ははっきり言ってありませんが……、でも、我々の上位の存在がその力を与えてくださった。それはこの戦争の唯一の打開策と言ってもいいのではないでしょうか?」


 その言葉を言って、果たして信じてもらえるのだろうか。

 そんなことを考えたが、それは杞憂であると直ぐに感じることになるのだった。


「……まあ、ストライガーはそう言うと聞かないからな。それに、あなたたち使徒に今まで導いていただいた実績もある。そこを俺たちも信じたほうがいいのだろうよ」

「そうですね。確かに、それは一理あります。何だ、筋肉馬鹿かと思っていましたが、案外考えが回るのですね。まあ、伊達にこの会議には呼ばれていませんか」


 グランズとリーナはあっさりと和解してしまった。

 それはストライガーの作戦に同意したためか?

 それはストライガーの地位に逆らえなかったからか?

 いいや、それはどちらでも無いだろう。

 確定事項は少ないが、今はっきりとしていることで持論を展開していけば、二人ともストライガーに色々と『借り』があるということだ。

 だから、その借りを返すために――多少無茶な作戦であっても了承しよう、という考えなのだろう。二人の考えはそう考えていけば、至極納得がいく。

 だが、問題は三人目だった。



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