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異世界で、英雄譚をはじめましょう。  作者: 巫 夏希
第二章 ハイダルク編
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第二十四話 エルフの隠れ里②

「アイツを倒す方法というのは、無いのですか?」


 僕はミントに訊ねてみる。もっとも、すぐに見つかるものではないと思っているが――。


『無いことは無いですが……。しかし、それを使いこなせるかどうかは解りませんよ?』


 そう言って、ミントは僕の周りを一周する。


「あの……どうしましたか?」

『いや……うん。行けますね。ちょっとやってみましょう。物は試しです。あなたに魔法の技術、そのすべてを授けます』


 魔法。

 でも、僕が学んでいたのは錬金術だったと思うけれど……。

 しかしミントは問答無用で、僕の前に移動すると、目を瞑った。

 そして誰にも聞こえないような小さな声で、詠唱を開始した。

 目と鼻の間の距離しか離れていないというのに、ミントの声はとても小さくて、聞こえなかった。

 きっと、この声がミントのほんとうの声なのだろう。


「……うっ」


 同時に、頭が痛くなる。

 まるで大量のデータを思い切り脳内に直接書き込まれているような、そんな感覚。

 有無を言わさずたくさんのデータが流し込まれていく。

 それは魔法の原理、そして技術。

 初心者である僕が、魔法を使いこなすには十分すぎるそれを、僕はミントの詠唱により思い切り流し込まれた。

 頭痛がする。大量のデータを一気に、短時間で流し込まれた。処理しきれない、と言えばうそになるが――きっとそういう感覚なのだろう。


『……終わりました』

「これが……これが魔法だと?」

「ええ。しかし、その大きすぎる情報は、いずれあなたを滅ぼすでしょう。それだけは、理解していただきたいものですね……」


 ミントは何か言ったけれど、囁く様な声だったので、僕たちにまで届かなかった。


「それでは、これであのバケモノと……!」

『ちょっと待ってください。まだ、まだ足りません』

「?」

『まだ使えるモノがある、ということです』


 そう言ってミントはどこかへと向かった。少し動いて、立ち止まる。そうして僕たちのほうを一瞥して、また動き出した。

 どうやら、ついてこい、と言っているようにも見えた。


「……どうやらまだ隠している何かがあるようだな」


 ミシェラの言葉を聞いて、僕は頷いた。


「向かおう、ミントの動く方向へ……」


 そして、馬車もまたゆっくりとそちらの方向へと向かった。



 ◇◇◇



 ミントが居た場所は、巨大な木の室の中だった。


「……カーラさん、ミシェラ。ここで待っていてくれませんか?」

「どうして?」

「いや、何か……何となくだけれど、僕たち三人だけに用事があるような気がするんだ。あのミントとかいうエルフは」


 ルーシーはそう言って、馬車から降りた。

 僕も、なんとなくそのような予感はしていた。

 そして、それはメアリーも同じだった。


「あら? ルーシーもそう思っていたの? 奇遇ね、実は私も、なのよ。けれど、どうしてそういう感覚をしているのか解らないけれどね……。もしかしたら、ミントさんがそういう感覚を無意識に流しているのかもしれないわね?」


 僕たちは、三人それぞれの言葉を聞いて――そして同時に頷く。


「解ったわ。それじゃ、私たちはここで待っています」

「何かあったら、すぐに私たちを呼びなさいよ」


 カーラ、ミシェラはそれぞれ僕たちにエールを送る。

 それを聞いて、僕たちは頷いて――木の室の中へと入っていった。

 木の室の中には、小さな部屋があった。

 そしてそこには、三つの武器が並んでいた。


「……これは?」

『これは、ガラムド様から渡された武器です。それぞれシルフェの剣、シルフェの杖、シルフェの弓……。聖なる力が宿っていて、絶大な力を誇ると言われています。この平和な時代に必要かどうか解りませんでしたが……、今ならば必要である。そう思うのですよ』


 そう、ミントが言った瞬間――。

 剣を見ると、それがほのかに緑色の光を放ったような気がした。


「?」


 そして――剣がゆっくりと動き出す。ひとりでに、勝手に。


『まさか……剣が持ち主に呼応している、というのですか……!』


 シルフェの剣はそれに頷くように、突き刺された地面から抜け出すと、自動的に僕の左手、その手元に柄が――まるでそこを掴め、と言っているかのように――移動した。

 そして僕は、その、シルフェの剣を――しっかりと掴んだ。

 同じ現象は、ルーシー、それにメアリーにも起こった。

 お互い、無意識に見ていたのだろうけれど、ワンテンポ遅れて、ルーシーには弓が、メアリーには杖が自動的に装備できる場所まで、武器が移動してきた。


「これって……どういうこと?」

「解らない……。けれど、これで、戦える気がする……」


 僕はその剣から感じる力が、とても強いものだと――感じた。

 ミントは目を丸くしていて、とても驚いている様子だった。


『……まさか、このようなことが起きるなんて。ええ、ええ、これなら、これなら戦うことが出来るでしょう。剣、杖、弓、それはそれぞれあなたたちの基礎エネルギーを底上げすることで、普通の武器を装備するよりも何倍のパワーを出すことが出来ます。それならば、あなたたちもあのバケモノを倒すことが……きっと!』


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