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異世界で、英雄譚をはじめましょう。  作者: 巫 夏希
第二部第三章 収束する世界と追憶編
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第二百三十九話 偉大なる戦い・決戦編④

 シルフェの剣を受け取ってから、キガクレノミコトの身体から徐々に光の粒のようなものが浮かび上がってきた。いや、キガクレノミコトだけではない。ストライガー以外のほかの『使徒』の身体も同じように光の粒が身体から浮かび上がってきていた。


「どうやら、我々がこの世界に居ることが出来るのもここまでのようですね」


 キガクレノミコトがぽつりとそう呟いた。


「つまり、この世界から消えてしまう……ということですか」


 僕の問いに、キガクレノミコトは頷く。

 キガクレノミコトはゆっくりと口を開いて、


「なに、悲しむことではない。寧ろこれは世界が進化していくためのプロセスだと思ってもらえれば良い。世界がどうなろうと君たちの知ったことでは無いかもしれないが……いずれにせよ、古い世代からずっと生きている存在は、ここに存在し続けてはならない。それが人間であろうと、そうでないとしても。いつかは弊害が出てくるのですよ」

「でも、そうだとしても……。やっぱり、あなたたちが居るべきでは」

「それは人間の常識での問題でしょう。世界の、次元の、問題からしてみればとっても小さな……些細な問題ですから」

「些細な問題であったとしても……。それは変えることは出来ないのですか!」


 僕は思わず感情的になってしまう。それは普段の僕とは違うのかもしれないけれど、でも、ここで一番情報を知っているであろう存在を逃してはならない――僕はそう考えていた。


「それは、あなたのエゴですよ」


 まるで心の中を見透かされているような気がして、僕は言葉を失った。

 すっかり姿形は残っておらず、輪郭がぼんやりと見えるくらいにまでキガクレノミコトの姿は消えていた。


「でも……」

「でも、ではありませんよ。あなたが何を望んでいるのかは分かりませんが……、いずれにせよ、あなたが私たちの残留を望んでいるのは、確実にあなたの自意識から来ているもの。とどのつまり、エゴイズムによるものです。あなたがそれを理解しているのか、理解していないのかは定かではありませんが」


 図星だった。

 だからこそ僕はキガクレノミコトに対して、何も言い返せなかった。


「……まあ、あなたに対して何か咎めるつもりはありません。私たちは消え去って、その力を剣に授ける。そして、行動はすべて人間に託すのですから。あなたの行動一つでこの世界が崩壊しかねない。そんな重要なことを、あなたに託したまま私たちは無責任にこの世界から旅立つのですから」

「そこまで言ったつもりは……」

「けれど、これだけは忘れないでおきなさい」


 唐突に。

 強い口調でキガクレノミコトは言い放つ。


「世界には大きな意思がある。そして我々はそれに従うしか無い。逆らうことは許されない。それは世界の上位にある【箱庭】が監視しているから」

「箱庭……? 意思……?」


 ここに聞いてあまり聞いたことの無いパワーワードが出てきた。

 いや、正確に言えば【箱庭】に関してはキガクレノミコトがさらりと言っていたか。その詳細についてはあまり言っていなかったように思えたけれど。確か、ムーンリットという創造神が居る場所だったか?

 いや、そんなことは関係ない。

 なんでキガクレノミコトは急にそんなことを?


「良いですか、風間修一。はっきり言ってしまえば、私たちだけでは箱庭へと向かうことは不可能でしょう。ですから、この世界の仕組みを変えることは出来ません。ですが、もし可能ならば……、いつかは出来るはずです。そして、箱庭に向かったなら、これだけは決してしてはなりません」


 そこでキガクレノミコトの身体、その輪郭も消えていく。

 キガクレノミコトの言葉も、徐々にノイズが混じり聞こえなくなっていく。


「……神の…………は…………耐え切れ…………だから…………」


 そうして、キガクレノミコトの身体は完全に消失した。

 彼女の身体から出てきた光の粒は、僕が持っていたシルフェの剣に注がれていく。

 光の粒が注がれた剣は、どこか神聖な雰囲気を放っているように見えた。


「これが……」

「さあ、行きましょう。風間修一」


 残されたストライガーは、僕に向かって言った。

 彼女は使徒として、唯一残った存在だ。そして使徒の中で唯一の人間だ。だからこの世界に存在し続けることが出来た。

 だから彼女はずっとここに居るのだろう。


「私も力を使ったので、使徒としての特別な力は無くなってしまいましたが……、いいえ、今はそう言っている場合ではありません。シルフェの剣に力が注がれた以上、もう時間が無いのです。急いで、宣言をせねばなりません」


 そう言って僕の手を取ると、足早に会議場を後にする。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。宣言って? いったい、誰に対して何を宣言するんだ?」


 僕の質問に対して、さも当然と言えるような態度で、こちらを振り向くこともせずに答えた。


「何を宣言するか、って? それは分かりきった話では無いですか。この世界の人間に対して、オリジナルフォーズという脅威に立ち向かう。大いなる戦いの始まりを、今ここに人間の前で宣言するのです」

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