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異世界で、英雄譚をはじめましょう。  作者: 巫 夏希
第二部第三章 収束する世界と追憶編
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第二百二十六話 偉大なる戦い㉗

 キガクレノミコトが言っていることを要約すれば、人間は二つの木の実のうち生命の実をその身に取り込んでいないから壁を視認出来ないが、キガクレノミコトならばそのもう一方も取り込んでいるから壁を確認出来る、ということだった。

 しかしながら、そう言われたところで、僕達人間には何も出来ないという結論に繋がるのは当然だろう。

 それを知っているからだろう。キガクレノミコトはさらに僕に話しかける。


「……だから、簡単に言ってしまおう。このままではこの世界はどうなってしまうかははっきりとしない。それは『使徒』である我々も危惧している事案なのだ。だからこそ、我々はこの世界を次の世代に託すべく考えている。……それが紛れもない、君たちだ」

「人間に、この世界を託そう……と?」


 僕の言葉にゆっくりと頷いたキガクレノミコト。

 キガクレノミコトは頷いた後、円卓に座る七名の人間(?)――いや、使徒に掌を向ける。


「私たちは元の世界から新しい世界への転換期を見守り続けてきた。しかし、それももう終わり。あとはこの世界を次の世代に橋渡ししてしまえばいいだけのことだ。監視役はその役目を解き、次の世代には干渉しない。我々はそういう存在である」

「そういう存在……」

「しかしながら、我々はこの世界から離れたがっているかと言われるとそれは間違いだということも、君には理解してもらいたい」


 言ったのは欠番だった。


「世界がどうなるのか、あなたたちは知っているということですか?」

「知っているといえば嘘になるが、知らないといえばまた嘘になるだろう」

「?」

「とどのつまり、この世界はどうなるかは解っていない。大きな流れについては、漸く我々にも理解できるほどの尺度にまで落とし込まれたものの、どうあるべきか、どうしていくべきかまでは解っていない。残念なことではあるが、それが世界だ」

「何を言っているのか……さっぱり解りませんよ!」

「解らないだろうな。だが、解らなくていい。でも、これだけは解ってもらいたい。そうでないと、君の世界も、我々の世界も崩壊して、誰も救えない未来になってしまうことだろう」


 キガクレノミコトはそうはっきりと言葉を言い切って、目の前に置かれていた湯呑を手に取る。

 そしてそのまま口へと傾けて、一口入っていた液体を啜った。何が入っているかは見ていなかったけれど、お茶か何かの類だろう。

 キガクレノミコトは水分補給を終えると、再び僕のほうを見る。


「君はこの世界の人間だ。この世界に存在していい人間だ。そして私たちもこの世界に存在していいのかもしれない。しかしながら、長くこの世界に存在し続けていると、それはそれで不都合が発生する。このままではやがて世界は『歪み』が発生し、やがてリセットしないと世界が続いていけなくなる。それは、古い歴史でも幾度となく行われていたプロセスだ」


 幾度となく行われていたプロセス。確かに歴史上でもノアの方舟を一例として様々な『リセット』が起きている。思えばそれは世界の歪みを一時修正するための最終プログラムなのかもしれない。まあ、細かいことは知らないから、ある程度自分で事実を補完している部分があるのだけれど。

 世界の仕組みは詳細まで知ることは無い。それは僕がただの人間だから仕方がないといえば仕方がない。

 そして目の前に居るキガクレノミコトを筆頭にした『使徒』は世界の仕組みを、少なくとも僕よりは知っている存在だ。

 だったら少なくともキガクレノミコトの言葉に従うべきなのだろうか。

 その発言が正しいことなのか、間違っていることなのか、それは僕には判断のしようがないのだから。


「……話を進めようか。そうでないと、これからの物語が進まなくなってしまうからな」


 深い溜息を吐いたのち、キガクレノミコトは言葉を紡ぎ始めた。


「これから、この世界に大きな戦争が始まる」


 大きな戦争。

 それはきっと僕が知っていることで言えば――『偉大なる戦い』だろう。

 偉大なる戦いをこれから追体験するということ。それがガラムドが僕に課した『試練』であるとするならば、きっとこの試練のクリア条件は『偉大なる戦いを勝利すること』。おそらく、シルフェの剣に関する重要なことがこの偉大なる戦いにちりばめられている――僕はそう思っていた。

 キガクレノミコトはゆっくりと立ち上がり、僕のほうへと歩き始める。


「簡単な謎だった。人間は神の作り出した次元の壁を破壊できない。しかし、我々ならばそれを破壊できる。……ならば、どうすればよいか? この戦いを起こさないためにも、あるいは終結させるためにも、次元の壁を破壊しておかねばならない。この世界は、どうあるべきか。いや、管理している世界を、どうしていかねばならないのか」

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