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異世界で、英雄譚をはじめましょう。  作者: 巫 夏希
第二部第三章 収束する世界と追憶編
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第二百三話 偉大なる戦い④

「これが……この絶望が、最後だって? ふざけるなよ、そんなこと信じられるか。そんな未来なんて……」

「残念ながら、これはある歴史に沿ったものです。その歴史に沿って進められていますから、実際のところ、この歴史をゆがめることは不可能です。もし、あなたがそれをしようとしたらその瞬間『リセット』されます」


 リセット。

 その言葉の意味は――ゲームでしか使ったことは無い。

 もしそれがゲームでいうところのリセットそのものであれば、


「……あなただって、その『リセット』の意味を理解しているのではないでしょうか? ええ、そうです。もしあなたが世界の歴史を歪めようとするのであれば、あなたは、ボク自らその世界をリセットします。セーブポイントはたった一つだけ。最初からやり直しです。ですから、もしあなたが元の世界に戻りたいと願うのなら、あなたがあのシルフェの剣の力を引き出したいのなら、正しい未来へ導きなさい。世界のために生きていく人間を残して、今後残すと世界にとって為にならない人物を殺す。たったそれだけのことです。あとは、あなたがその偉大なる戦いで生き残ることができるかどうか」

「狂っている。そんなこと、狂人の考えだ」

「そうでしょう。だってボク、人じゃないですから。カミサマですからね。それくらいお手の物ですよ。もっと直接世界に干渉できるならばあなたなんて存在は不要ですがね」


 神様とは不条理だということ。

 それを僕は思い知らされた。だって、考えてもみればわかる話だ。仮に一般人がこの未来を予測出来たというならば、この未来を回避しようと思うはずだ。誰しも未来を変えようと思うはずだ。

 にもかかわらず、ガラムドは、この未来へ突き進めと言った。多数の人間が死に至り、すべてがリセットされるあの展開以外認めない、と。

 それは結局のところ僕たち一般人が考えられる範疇の話であって、神様という次元が違う存在にはあまり関係のないことなのかもしれない。人間の考えなど神様から見ればミクロな考えに過ぎず、神様の考えはマクロ的考えであるということ。おそらく、そういうことなのだろう。どこまでそれを信じればいいのかは解らないが。

 しかし、問題はたくさんある。そう、例えば――。


「誰が生き残るべきなのか、というリストは見せてくれないのか? そう、例えば誰が生き残って誰が死んでしまうことが正解なのか……」

「それを教えてしまったら、それこそあなたはボクの操り人形になってしまう。それなら面白くないし、試練としては不適当。ならば、どうすればいいか。……それを見極めるのが、あなたの仕事。なに、そう難しい話じゃない。ボクとあなたはとても似ているからね。簡単に言えば、あなたの感性でそれを見極めてほしい。それもまた試練の一つ、ということ」

「そんなむちゃくちゃな……」

「むちゃくちゃかもしれません。しかしながらこれは世界の意志です。あなたがどう足掻こうとも、世界はこうならなくてはならない。そうして、それは……。ああ、もう面倒くさいですね。はっきりと言ってしまいましょうか」


 ガラムドは頭を掻いて――言ってしまえばとても俗っぽい動作をして――言った。


「あの世界は試練のために作り上げた世界であるということは、嘘です。まあ、なんとなく気づいているでしょうが。しかしながら、その正解はもっとあなたにとって想像以上であり、或いは想定の範囲内かもしれません」

「ごちゃごちゃしていないで、さっさと正解を言ってくれないか?」

「話には段階というものがあるのですよ。……ふふ、まあ、いいでしょう。あなたがそこまで焦るというならば、もっと焦るような言葉をかけてあげましょう。あの世界は、紛れもない現実世界そのものですよ。ただし、偉大なる戦いが起きる少し前に時間を合わせていますが」


 なんとなく想像はついていた。

 あの世界が――実はもともとの世界の時系列そのものではないか、ということについて。

 しかしながら、その考えは時期尚早であると思っていたし、あまり考えたくもなかった。

 つまり、あの世界で死んだ人間が、少しでも歴史と変わってしまっただけで、のちの歴史にどれほどの影響をもたらすのか解ったものではなかったからだ。

 運が良ければ、二千年後の未来に――オリジナルフォーズが存在しない未来だって有り得るかもしれない。

 ただし、それは理想論だ。可能性の上であって確定的事項ではない。場合によってはもっと酷い未来が待っているかもしれない。


「それと、もう一つ」


 ガラムドは右手の人差し指を立てて、話を続ける。

 まだ何か隠していることがあるのか。


「さっきボクは『リセット』と言いましたが、その行為はあまり望ましいものではありません。なぜなら知識は残りますが、また同じ結論に至る可能性が高い。それに無限に出来るわけでもありませんからね……。残念ながら、神とは言えどもそう簡単に世界を操ることなど出来ないのですから。そうですね……、精々三回が限度でしょうか。確かあなたの世界ではこのような言葉がありましたよね? 『仏の顔も三度まで』、でしたか。ボクは神様であって仏ではないけれど、その意味に当てはまるとは思わないかい?」


 その言葉はそもそもことわざだし、何でガラムドがそれを知っているのかという疑問も浮かんでくるが、それについては今考える必要もないだろう。

 いずれにせよ、僕はあの世界での身の振り方をもう一度考える必要があるようだった。

 あの世界が元の世界へと繋がる歴史の始まりであるとするならば、やはり慎重に動く必要がある。僕の一挙動がその後の未来に大きく影響を及ぼす危険性があるのだから。


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