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異世界で、英雄譚をはじめましょう。  作者: 巫 夏希
第二部第三章 収束する世界と追憶編
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第二百二話 偉大なる戦い③

 食事を終えて片づけを一緒に手伝ってそのまま談笑をして床に入ったのが午後七時。

 未だ時間的に早いものを感じるが、電気が非常に勿体無いことを考えると仕方ないことかもしれない。

 この時間軸では、電気を使用することが出来る。しかしながら、電気を作るための原油は殆ど枯渇している。正確に言えば、ネピリム開発と管理維持のために殆どの原油が使われてしまっているのだという。

 人間を守るための技術を維持するために、人間の生活を犠牲にしているというわけだ。


「……それにしても、ガラムドはいったい僕になにをさせたいのか」


 寝返りを打ちながら、独りごちる。

 実際のところ、ガラムドが何の目的をもって僕をこの時間に移動させたかが理解できなかった。いや、シミュレーションと言っているから絶対には過去の話にはなるのだろうけれど、そこまで細かいことを気にしていない。

 問題は、ガラムドが僕に何をさせたかったのか、ということ。

 ただ偉大なる戦いを追体験させたかっただけで、わざわざこんなことをさせるとは思えない。

 となると、何かしらガラムドがメッセージを残そうとしているのか。

 神から、ただの人間へ。

 僕は何を知って、何を得ればいいのだろうか。

 結局それについてはこの世界にやってくる前に、一度もガラムドから聞くことはできなかった。


「なるようにしかならない、か……」


 溜息を吐いて、僕は目を瞑った。

 無限にも近い闇が視界を支配していく。



 ◇◇◇



 足元を雲が覆いつくしている世界だった。

 空全体が靄にかかっているためか、周りの景色を見ることが出来ない。

 そして、僕の身体は風間修一のものではなく僕自身の身体になっていた。


「……ここは」

「ここはあなたの夢の中です」


 ふと目の前を見ると――ガラムドがふわりと浮いていた。


「ガラムド……!」

「この世界において、あなたに干渉出来るのはこのようにレム睡眠の状態でしか出来ませんからね。あなたには申し訳ございませんが、夢の世界にお邪魔することとしましたよ」


 そしてガラムドはゆっくりと音を立てることなく雲海に着地する。

 髪をかき上げて、ガラムドは言った。


「さて……、一度しか言いません。あなたがこれから何をすべきか、そうしてあなたは何をしないといけないのか。それについてお話ししないといけないでしょう」


 一部言葉が重複しているように見えるが、そこでツッコミを入れてはいけない。

 そう思って言葉を堪える。

 ガラムドの話は続く。


「……あなたには、この『偉大なる戦い』を追体験していただきます。正確に言えば、ある結末へと導いていただく、ということになりますね。ボクの力をもって、あなたを偉大なる戦いに関わった人間の身体に精神だけ吹き飛ばした、という形になりますが」

「精神だけ、吹き飛ばした?」


 その言葉にコクリと頷くガラムド。

 つまりガラムドは何が言いたいのか。はっきり言って、訳が分からなかった。

 いずれにせよ、こうやってガラムドが話をしているということは何らかのヒントをくれるということだ。

 もし手に入らないと悟ってしまったら、無理やりにでも手に入れるしかあるまい。そんなことを考えていたわけだが――。


「……ああ、ご安心ください。きちんとヒントは差し上げますよ。そうですね、この試練の結末をお教えしましょう。とどのつまり、あなたが今からこの試練を進めるにあたって、エンディングとなるのはどのポイントか、ということです」

「小難しい言い回しをしていないで、さっさと言ったらどうだ」


 溜息を吐くしか無かった。

 ガラムドの話に水を差すつもりはさらさら無かったが、しかしガラムドの話があまりにも回りくどかったが故のことだ。もしもっとストレートに話をしているならば、僕だってもっと素直に話を聞いていたのだけれど。


「解りました、お伝え致しましょう」


 ガラムドはいつの間にかもっていた杖で床をトン、と叩く。

 たったそれだけのことだった。

 叩いた跡が波状に広がっていく。そして、世界が闇から広がっていく。

 そこに広がっていたのは凄惨たる状況だった。

 人々の泣き声が広がり、脂の焼ける焦げ臭い匂いが広がる。瓦礫が積み上がっている山の隣には、同じように――人の死骸が積み重ねられている。

 轟音を上げるオリジナルフォーズ。

 そうして、それを封印するべく――何だろう、あれは? また別のメタモルフォーズに似た存在が居た。そうして人間も居る。人間の数は少なかったが、この状況を見てとても喜べる様子ではなさそうだった。

 当然だ。もし僕があの状況に居たら喜べるはずがない。

 そして、ガラムドは僕がその景色を一瞥したのを待っていたのか、ゆっくりと口を開いた。


「あなたの試練、その終わりはこの景色です」


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