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異世界で、英雄譚をはじめましょう。  作者: 巫 夏希
第二部第二章 伝説の三武器編
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第百八十一話 神殿への道⑫

 石版に書かれていた内容は、確かに文法は滅茶苦茶だった。見るに堪えない、とはこのことを言うのかもしれない。いずれにせよ、僕の読み方が正しいかどうかははっきり言って解らない。

 しかしながら、読み解いていかねば何も始まらない。


「……ガラムドは、世界の夢と希望を私たちにお教えになられた」


 そして、僕は少しずつではあったけれど、その石版に書かれている文字を読み始めていった。

 解らなかったら本当にお手上げだったよ、とバルト・イルファは言った。何故だか知らないが、さっきからお前はどこか余所余所しくないか? 一応着いてきているのだから、何か仮にダメだったら別の案くらい考えておいてほしかった。


「……ガラムドは世界の明日と未来を私たちに導いてくださった」

「明日に未来、か。やっぱりガラムドは未来を視ることが出来たのかな? 祈祷師自体がそういう力を持っているのも、ガラムドの血を引き継いでいるから、というのが確定なのかもしれないね」

「まだ続きはあるぞ。……ガラムドは世界の終わりに光を照らし、新たな世界の始まりを告げた。……これって、どういう意味だ?」

「多分、だけれど……、神話上に描かれている『偉大なる戦い』のことを指しているのではないかな? 文献も殆ど残っていないからどれくらいの規模のものかは定かでは無いけれど、少なくともこの星がいくつかに分裂してしまったのはそれが原因だと言われているし」


 惑星の分裂。

 本来ならば有り得ないことではあるのだが、この惑星もかつては一つの球体だった。それこそ、あの青い惑星と同じように。

 しかしながら、偉大なる戦いが起きてすべてが変わってしまった。バルト・イルファも言った通り、その戦いがどれくらいの規模であるかは定かではない。ただ形として残っているのは、今の惑星の現状だ。今の惑星は平皿のようになっていて、その隅は滝になっている。ワールドエンドと呼ばれたその先に挑んだ人間は多くいるらしいが、誰も戻ってくることは無かった。


「……惑星の分裂って、実際、起きてしまったら星に甚大なダメージを与えそうなものだけれどな。どうなんだろうか、そこは」

「それを僕が知っていると思っているのか?」


 バルト・イルファの言葉に僕は首を横に振った。確かにバルト・イルファの言う通りだった。それをバルト・イルファが知るとは到底思えないし、それについては別に考えていなかった。

 それはそれとして。


「惑星の分裂について、バルト・イルファ、君が知っていることを教えてくれ。もしかしたら何かヒントになることがあるかもしれない」

「ヒント、だって? そんなこと無いと思うが……。まあ、いい。教えてあげよう。まあ、僕が知っていることなんて学校の教科書に書かれていることに毛が生えた程度だけれどね」


 そう言って、バルト・イルファは話を続けた。


「……先ず、この世界はガラムドによってつくられたと言っている人も居るが、正確にはそうではない。ガラムドはあくまでもこの世界を救った存在に過ぎず、この世界はもともと存在していた、ということになる。……まあ、それは旧時代の文明遺産を見てもらえれば解る話なのだけれど」

「……ガラムドはこの世界を救った。だから、神として崇められるようになった、ということか?」


 こくり、と頷くバルト・イルファ。

 成る程、つまりガラムドはこの世界を災害から救ったから、神として崇められるようになったということ。それならば、万物を作り上げた神よりかはグレードが下がるということになるのだろうか。いや、神は同格しか考えられないのかもしれないけれど。僕がもともといた世界のように、八百万の神が居る世界ではないだろうし。


「そして、ガラムドはこの世界を救った後も、人間とともに暮らしたと言われている。戦いが終わった後は平和そのものだったからね。……ガラムドはそのまま誰かと結婚して、子供を二人産んだと言われている。その名前は確か……、アダムスとエヴァだったか。その名前は、祈祷師の家系の先祖として言われているし、それは彼らにとってとても有名な話だ」

「……ああ、そういえば祈祷師はガラムドの直系の子孫だったか。そんな話もあったな」


 それを聞いたバルト・イルファは乾いた笑みを浮かべる。


「おい、別に僕には問題ないけれど、それは祈祷師連中やガラムドを信仰している人間から聞けば、卒倒するぞ。たとえ君が予言の勇者だとしても、殺されてしまうだろう。場所と時間を弁えた発言をしたほうがいい」

「でもここにはそんな人間なんていないだろ?」


 バルト・イルファの言葉に売り言葉に買い言葉で答えると、バルト・イルファは頷いて、


「ま、それもそうだ」


 と答えた。


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