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異世界で、英雄譚をはじめましょう。  作者: 巫 夏希
第二部第二章 伝説の三武器編
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第百七十八話 神殿への道⑨

「……ほんとうにこのあと、どうなってしまうのだろうか」


 それはルーシーだけではない、ほかの皆も考えている話だった。

 結局のところ、この世界がこれからどうなってしまうかなんてことは誰も解っちゃいなかった。しいて言えば祈祷師の力を受け継いでいるメアリーとサリーが解ることなのかもしれないが、それでもまだ完全な『予言』をする力を持ち合わせてはいない。

 祈祷師にも才能、得手不得手がある。とどのつまり、予言の確率が高い祈祷師も居れば、それほど高くないために国に仕えられない祈祷師が居ることも事実だ。そういう祈祷師は大抵別の才能が開花していることが多いため、自分の才能にマッチングした職に就くことがある。

 サリーもその一人で先生の道を歩んだし、メアリーもどちらかといえば指揮官の才能に長けている点が多い。

 つまり、その理論からいけばリュージュは予言の確率について類稀なる才能を持っている――ということになるのだ。

 それでもメアリーは予言をいうことはある。ただし、彼女自身祈祷師としての自覚はなく、その予言も確定的なものではなく、どちらかといえば抽象的なものに限られてしまうのだが。


「……いずれにせよ、このままだと寝ずに神殿に到着することになりそうだ。少しは寝ておかないと……」


 そう言って。

 ルーシーは目を瞑った。



◇◇◇



 それから数時間ほど経過して、神殿近くの湖に到着した。

 おおよそここから一キロメートルといったあたりだろうか。甲板に立つと山並みに神殿が見える。そして、そこから少し離れた位置に森林があり、その中心地に――。


「祠がある、ということね」


 メアリーとルーシーは船に乗り込んでいた。

 それも飛行船のような巨大なものではない。三人ほどが乗ることのできる小さな帆船だった。


「これで湖岸まで行って……あとは歩き?」

「ああ、致し方ないだろうね。あいにく、今は朝だ。今なら『復りの刻』から戻ったばかりだ。だから、人々は赤い液体でこびりついている状態のまま。たまにメタモルフォーズは居るかもしれないが、まあ、それくらいなら何とかなるだろう」

「……ルーシー、それってほんとう?」

「何とかなるよ、きっと」


 メアリーの不安を押し切るように、ルーシーは言った。

 それを聞いたメアリーは少しだけ表情が朗らかになったように見えた。

 そして彼女は大きく頷いた。


「……そうね、ありがとう。ルーシー。行きましょう、この世界を元に戻すために。そして、フルを助けるために」

「……そうだね」


 ルーシーは笑顔でメアリーの考えに賛同した。


『可哀想だよね、メアリー・ホープキンは。目の前にいる人間は、自らの愛情のために、フルを殺そうとしているのだから』


 彼の頭の中に声が響いたのは、ちょうどその時だった。

 彼はそれを聞いていたが、表に出すことはなく、そのまま頭の中で考え事をするように、その言葉に返事をしていく。


(僕が何を考えていようと勝手だろ。確かに……メアリーに噓を吐くのは心地良いものじゃないことは十分に理解しているさ。けれど、これは僕のためでもあり、十年間彼を追い求めていた彼女を助けるためでもあるんだ。それは君だって十分に理解してくれているはずだ。そうだろう?)

『それはただのエゴでしょう?』

(エゴだっていい。僕は彼女のことが好きだ。けれど、彼女は十年間行方をくらまして、勝手に世界を危険に晒したあいつばかり好きになっている。少しくらい僕のことを見てくれたっていいじゃないか。それは、君だって言っていたはずだ)

『……まあ、そうかもしれないね』

「ルーシー。忘れ物はない?」


 メアリーの言葉を聞いて、我に返るルーシーはゆっくりとその言葉に頷いた。


「ああ、メアリー。問題ないよ。このまま、いつでも出発できる。急がないと、彼らが先に祠に到着してしまうだろうからね。まあ、もっとも彼らは『花束』を持っていないからそれを見つけない限り神殿へ入ることはできないのだけれど」

「……そうね、そうだったわ」


 メアリーの言葉を聞いて、ルーシーは操縦桿を握った。

 飛行船の甲板からは、リーサがこちらに手を振っていた。


「二人とも、気を付けてね!」


 その言葉に頷くルーシーとメアリー。

 そうして二人は、湖岸へ向けてその船を動かしていくのだった。


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