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異世界で、英雄譚をはじめましょう。  作者: 巫 夏希
第二部第二章 伝説の三武器編
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第百七十四話 神殿への道⑤

 ルーシーの言葉を聞いて、頷くメアリー。

 しかしその端末を見つめるルーシーの真意が、未だにメアリーには見えてこない。

 ともあれこのままでは何も進まないことだってメアリーには解っていた。ルーシーが何か考えていることも、そうして、それはメアリーにとって知らないことであるということも、メアリーは理解していた。けれどメアリーは敢えてそれを追求しなかった。

 いずれそれにより何らかの軋轢を生むのではないかと、メアリーは考えていた。しかしながらメアリーはそれについて深く考えなかった。考えていたことについては確かだったが、ルーシーとメアリーは十年以上の仲であったことを考慮しても、深く不審に思うことはしなかったのだった。


「……そもそもの話になるけれど」


 メアリーは問いかける。

 端末をずっと眺めていたルーシーはそこで視点をメアリーに移す。


「花束……と言っていたこれ、実際にはどうやって使えばいいのかしら?」

「これ、かい?」


 メアリーが手に持っていた『花束』。それは今までのメアリーとルーシーが見たことのないものであったが、杖のようなものであることから、恐らく魔術系が封印されているものではないか――メアリーはそう推測していた。

 しかしながら、それ以上の情報は判明すらしなかった。とはいえ、その花束を使うことで神殿への道を開くことができるということも事実。寧ろ今まで神殿への封印が解かれることが無かったのも驚きだった。

 では、どうすれば良いか。

 メアリーの中では、一番考えていたこと。花束を使うことは解るが、ではどのようにそれを使えばいいのか、ということ。実際問題、それはルーシーですら解らなかった。とはいうものの、この花束とやらを持ってきたのはルーシーであったから、ルーシーが知っているものかと思っていたからだ。

 最近のルーシーには違和感を抱いていた。行動にどこか裏があるように見えてしまう。

 でもメアリーは、それを敢えて疑おうとは思わなかった。違和感こそ抱いていたとはいえ、それを確定とまではしなかった。やはりそれはメアリーとルーシーの十年以上の友情、或いは信頼というものからきているのかもしれない。

 メアリーは空を眺める。


「……神殿はどの方向?」

「ちょうどこの進行方向で問題ないよ。もっとも、今から僕たちが向かっているのは神殿ではなく、花束を使う祠だけれどね」


 祠。

 そういえばルーシーはそんなことを言っていた。花束を使うのは、神殿の近くにある祠であり、そこで使うことで神殿に張られている結界を解き放つことが出来るとのことだった。

 しかし、実際のところ。

 メアリーにそこまで考えられる余裕なんて無かった。

 実際の彼女であれば、そこまでたどりつく前に一つでも違和感を抱いていてもおかしくなかっただろうが、今の彼女はフルがオーダーに奪われてしまったことから、焦りを抱いていた。だからルーシーが何か違うことを考えているという可能性は抱いていたにしても、それを追求することはしなかった。

 それがどのような影響を及ぼすことになるかは、今の彼女には知る由もなかった。


「……その祠までどのくらいかかる?」

「ざっと見積もって数時間だろうね。でも、さすがに祠の真上まではこれで行かないほうがいいと思うよ。理由はそれくらい解ると思うけれど、このままの姿で見つかってしまうのは非常に面倒なことになる。出来れば、生身の状態で敵と対峙しておきたい。解るだろう?」

「……そうね。確かにその通りだわ」


 ルーシーの言葉にメアリーは頷くと、一つ大きく欠伸をした。


「ちょっと眠ってきたらどうだい?」


 それにいち早く反応したのはルーシーだった。もっとも今の空間にはメアリーとルーシーしか居ないから、ルーシーしか反応することは出来ないわけだが。

 それを聞いてメアリーはゆっくりと頷く。


「申し訳ないけれど、そうさせてもらおうかしら。……ちなみに、祠の真上までこれで行かないというのならばどうやって祠まで行くつもり?」

「忘れてしまったのかい? ここにはかつて偵察用の小型船があったじゃないか。人数は限られてしまうけれど、それでいけば相手にすぐに見つかる心配も無い。だからそちらのほうが安心だと思うけれど?」


 それを聞いてメアリーは安心していた。てっきり何も考えていないのでは、と思っていたからだ。しかしながら、ルーシーのその発言を聞いてそれは杞憂であると悟った。

 いずれにせよ、進路は見えてきた。

 このままならば、少なくともフルをまた説得することが出来る。この世界において、彼がどれほど重要な人間であるか。そのために、どれくらい危険なことを今から成し遂げようとしているのか。メアリーはそれを改めてフルに伝えなくてはならなかった。

 でも、その具体的な説明をしないまま、メアリーはフルを閉じ込めた。

 だから、フルも愛想を尽かしてしまったのかもしれない。かつての仲間に裏切られた、そう思っているのかもしれない。

 今度こそ、フルを取り戻さないといけない。

 メアリーはそう硬い意志を持っていた。だからこそ、フルに一度でも会わなくてはならない。会うためには手段を選ばない。それは、この世界に平和を取り戻すために、同じように手段を選ばないオーダーと同じだった。


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