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異世界で、英雄譚をはじめましょう。  作者: 巫 夏希
第二部第二章 伝説の三武器編
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第百七十三話 神殿への道④

「だったら、もう少し何かなかったのか。あれだと、無味乾燥に近い状態になるぞ。それに、どうやってあの神殿まで向かうというのか、教えてもらいたいのだが」

「……それって、前に伝えなかったかな? 確か、ホバークラフトで向かうんだって」

「ホバークラフト。……ああ、そういえばそんなことを言っていた気がしたね。でも、それに全員は流石に乗り込めないだろう?」


 僕の発言を聞いたバルト・イルファは首を傾げて、


「ホバークラフト……というよりも、ここから誰もいなくなってしまうことは無い。なぜなら、この空間自体が崩壊してしまう。今も彼女が、この空間を守るために行動している。鎮座している、と言ってもいいかな」

「……つまり、ここには誰かが残る、と。それじゃ、神殿に向かうのは誰だ?」


 僕の問いにバルト・イルファは頭を掻きつつ、


「それはつまり……、僕と君だけだよ。ほんとうはルチアも行きたがっていたが、ルチアがいなくなってしまうと誰もサリー・クリプトンを守ることが出来なくなってしまう。だから、ルチアは彼女の保護のため、だ」

「成る程。それならば、致し方ないのか。……それで? もう、ホバークラフトは準備しているのか」


 バルト・イルファは頷く。

 それを聞いて僕は納得して、彼についていくことにした。



 ◇◇◇



 エノシアスタビルの屋上には倉庫があった。

 そしてその倉庫には、一台のホバークラフトが置かれている。

 そもそも、ホバークラフト自体地上・水上を区別なく乗ることができる乗り物だったはずだ。確か空気で浮上させる仕組みを使っていたはずだが……。でも、そうだとしても、こんな高い場所から飛び降りたらあっという間に落下して粉々に砕けてしまうのがオチじゃないだろうか。さすがに自殺する気はないぞ。しかも、お前と一緒に心中とか死んでも嫌だね。


「……何を考えているか知らないけれど、僕だって一応考えているのだよ。別に、これに乗ったことで死ぬことはないし落ちることもない。それだけは安心してくれて構わないよ」

「いやいや、そういうことじゃない。……問題は、これくらい高い場所からホバークラフトで飛び出したらそのまま地上に落下する、という話だ」

「ああ、何だ。そんなことか、それなら問題ない。さっさと乗り込むといい。あとの問題は出発してから考えればいいだけの話しだ」


 ほんとうに大丈夫なのだろうか。

 そんなことを考えていたが、バルト・イルファがひっきりなしにそう言うのであれば一度信じてみるしかないのかも知れない。別に、ガラムドの書の魔法が使えなくなっているわけではないから、最悪バルト・イルファを放ってどこかに逃げてしまうのも手だが……。


「まあ、とにかく乗ってみたまえ。話はそれからだ。ただ、僕はこの後の操作の関係上、後部座席に乗ることになるから、運転は君が行ってくれ。なに、運転は簡単だよ。足元にあるブレーキとアクセルを押せばいいだけ。あとはハンドルか。それだけで十分だ」


 成る程。車の運転と同じ扱いか。それなら……って思ったけれど、まだ免許をもっていないからゲームでしか運転方法を理解していないぞ。

 まあ、やるしかないか。

 そう思って、僕はハンドルを握った。





 アクセルを踏み込んで、ホバークラフトを運転する。

 ホバークラフトはゆっくりとビルの屋上から動き始め、そうして空へと飛び立つ。


「……おい、これ、ほんとうにいいのか!?」

「大丈夫だ、問題ない!! そのまま、空へ駆けろ!!」


 バルト・イルファのいう通り、そのままハンドルを切ることはしなかった。

 そしてそのまま、ホバークラフトは屋上から空へ駆け出して行った。

 当然ながら、ホバークラフトはゆるやかなペースではあるが、地上へと落下していく。


「あとは、うまい具合に何とかしろ! このホバークラフト、飛行性能は無いが、凝縮した高圧空気を噴出することによって、高台から駆け出せば空を飛ぶことはできる!」

「だったら、それを早く言え!」


 バルト・イルファは何というか抜けているところがある気がする。それを思い知らされることとなった。……いずれにせよ、僕はバルト・イルファについて未だあまり知らないことが多い。

 いずれ彼のことについて真実を知る時が来るのだろうか――僕はそう思った。

 赤い大地を見つめながら、新しい世界へと旅立つ。



 ◇◇◇



 そのころ、メアリーたちもフルたちの姿を観測していた。

 ルーシーは何か機械端末のようなものを操作していた。画面には、点滅する光点が画面上を移動しているように見える。


「……メアリー、どうやらフルたちも神殿に向かって動き出したらしいよ」


 隣に立っているメアリーは頷いて、画面を見つめる。


「そうね、確かに、これなら何とかなりそう。……それにしても、フルは神殿に行くための術を知っているのかしら? 花束が無いと神殿に向かうことが出来ない、ということも」

「それくらい知っていると思うよ。だって、神殿に向かうということは、それもバルト・イルファの入れ知恵だろう。そうだとすれば簡単なことだ。あとはバルト・イルファたち『オーダー』を退治する。そうすれば、すべて終わりだ」


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