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異世界で、英雄譚をはじめましょう。  作者: 巫 夏希
第二部第一章 勇者の帰還編
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第百六十一話 終わりの世界、始まりの少年⑧

 罪の意識。

 確かにそれは間違っていないかもしれない。それは僕の認識で間違っている判断であるかと言われると微妙なところであるかもしれないけれど、しかし再確認することは必要だと思う。

 僕に罪の意識をさせないために、敢えてメアリーやルーシーはオリジナルフォーズについて有耶無耶にしたということなのだろうか?

 だとすればそれはそれで面倒な話だ。なぜ伝えてくれなかった。僕たちはずっと旅をしてきた――仲間じゃないか。


「それについて、解答を述べてあげましょうか。まあ、あくまでもそれは私の意見に過ぎないけれど」


 ルチアはどうやら僕の心を読んでいるらしい。いずれにせよ、心を読まれるのは気持ちいいことではない。気持ち悪いことだということには変わりなかった。

 それはそれとして、ルチアが教えてくれると言った。それは聞いておく必要があるだろう。バルト・イルファと僕が、ほんとうにオリジナルフォーズを封印するしか道が無いのか、ということについて、僕自身が吟味していかねばならない。


「メアリーとお兄ちゃんは徒党を組んで、予言の勇者に頼らない世界を作ろうとしている。そして、十年前の災害によって予言の勇者を悪い人間であると認識している人間は非常に多いから……、それを払拭しないといけないと思っているのかもしれないわね」

「払拭……か。確かにそうかもしれないな。広く知れ渡っているとするならば、僕を捕まえることは何も間違っていない。それに情報を取り出して、必要であるならば使い倒す。使えないと判断したらそこまで……、そういう感じなのだろうね」

「あら。充分、自分の立ち位置が理解できているじゃない」


 ルチアは嘲笑する。

 それは間違っていない。けれど、僕はあくまでも現在仕入れている情報から自分の立ち位置を吟味したうえで述べているだけに過ぎなかった。

 だから、僕の考えは一般の考えとは違うだろう。

 恐らく、メアリーやルーシーの考えとも違うはずだ。或いは今、僕たちは三種三様の考えを持っているのかもしれない。彼らの行動が誰の考えによるものなのかは定かでは無いが。


「……話を長々としてもつまらないでしょう。だから、ここは簡単に私が知っている情報をある程度提示しましょうか。それによってどうなってしまうかは、また、その情報を得てあなたがどう決断するかはあなたの判断に任せます。それはそれで、私は自分にメリットがあれば行動するだけに過ぎないのだから」

「決断、行動……ね。確かにそうかもしれないな」


 実際問題、僕はずっと考えていた。

 それはこの世界で再び目を覚ましてから、ではない。僕がずっとこの世界にやってきてから、考えていた。

 僕がこの世界を助けることで、僕自身にメリットが生まれるのかということについて。

 僕はゲーム屋に居て、気付けばこの世界にやってきていた。そのことについて僕は細かくメアリーたちに教えてはいない。それは僕がこの世界にやってきた意味を、僕自身が理解していないからだ。

 予言の勇者だから。世界を救うためにお告げがあったから。召喚されたから。

 そういうことじゃない。そんな、御託を聞きたいわけじゃない。

 問題はたった一つ。

 僕が呼ばれて、この世界を救ったことによって、何かメリットは存在するのかということについて。

 確かにそれを考えるのは、人間として間違っているのかもしれない。世界の危機なのだから、個人のメリットなど考えず進むのが一番だ、と。けれど、それは僕の中では一つ禍根を残すこととなっていた。メアリーもルーシーも、そしてレイナも、僕の知らないこの世界の人間みんな、様々な目標をもって生きているはずだ。メアリーとルーシー、それに彼らが率いる軍隊? のような組織は恐らく『世界の再興』を望んでいるのだろう。そしてそれはサリー先生率いるこの組織だって変わらないはずだ。もし目標が一緒であるならば、同盟を組んで行動したほうが一番な気がしないでもないけれど、あまりそれは進言しないでおこう。きっと彼らも気付いていて、それに違和感を覚えているのだろう。どうして、彼らは徒党を組むことはしないのか、ということについて。

 問題は僕の立ち位置だ。

 僕がこのままこの組織に居ることをよく思わないのは、きっとメアリーたちだろう。メアリーは僕を助けるために行動してくれたのだと、ルーシーが教えてくれた。この十年間、僕をずっと探していて、なぜか宇宙に居たのだという。それはそれで気になるところではあるけれど、それよりも僕の立ち位置が重要だからあまり考えないでおく。

 僕の立ち位置をどうするかによって、この世界の未来が決まる。

 そう言っても過言ではないだろう。メアリーたちの組織に居ても、サリー先生の組織に居ても、恐らく世界を再興させるために行動するはずだ。それがどういうプロセスを踏むのか、によって若干異なるのかもしれないが。

 それについて考えるにはあまりにも時間が足りない。サリー先生から提示されたタイムリミットはそう長い時間では無かったはずだ。その時間で僕がこの世界の現状を理解して、今この世界で暗躍している組織のパワーバランスを理解して、そして客観的に見てどの組織につくか考えるには、あまりにも時間が足りなすぎる。

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