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異世界で、英雄譚をはじめましょう。  作者: 巫 夏希
第五章 オリジナルフォーズ編
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第百四十八話 目覚めへのトリガー⑱


 その頃、僕は牢屋に入っていた。

 相も変わらず、と言う言い方が正しいのかどうかは定かではないけれど、いずれにせよここから脱出する術を持ち合わせていない以上、無駄な動きをする必要はない。メアリーたちの助けを待つしかない――というのが正直な感想だった。


「せめてシルフェの剣さえあれば……」


 せめて武器さえあれば何とかなったかもしれない。あれを使えばシールドを張ることが出来る。だからそれを使えば、数回は攻撃を防ぐことが出来るかもしれない。

 しかしながら、今僕の手元にはそれが無かった。

 せめてそれさえあれば、まだこの状況を打開できると思っていた。


「……どうすればいい。どうすればここから脱出することが出来る……!」

「やあ」


 声が聞こえた。

 扉の向こうに立っていたのは、バルト・イルファだった。


「バルト・イルファ……。いったい何しに来た? まさか、僕のことを笑いに来たのか?」

「まさか。だったらもっと有意義なことをしているよ。……それはそれとして、」


 そう言った直後、扉は思い切り開かれた。

 バルト・イルファが蹴ったから――直後にそれを理解したが、とはいえ、納得出来ないこともあった。

 なぜ、僕を助けるのか? ということについてだ。バルト・イルファは敵だったはず。なぜ僕をここから出そうとしているのか? 何か裏があるのではないか? そう思うのは至極当然なことにも思えた。

 バルト・イルファはそれを聞いて――一笑に付す。


「何を考えているのか解らないけれど、僕は君を助けたいと思っているわけではない。正確に言えば、それを終点と考えているわけではないよ。もっと崇高な目的があると考えている。どんな目的か、って? それは言ってしまえばナンセンスだ。結局のところ、君には遠からず近からず関係ないことだということだ」

「……バルト・イルファ、お前がいったい何を言っているのかさっぱり解らないのだが?」

「解らなくていい。いずれ解るときがやってくるだろう」


 そう言って、バルト・イルファは手を差し伸べる。

 それを見て、僕はその手を――取った。



 ◇◇◇



 緑の閃光と赤の閃光がぶつかり合い、弾ける。

 フェトーVSメアリー、ルーシー、レイナ。戦力差は単純に考えて三倍ではあるが、フェトーの攻撃はそれを単純に覆すことの出来るものだった。

 フェトーの武器である槍は魔力を補充することが出来る。それによって魔法を放つことが可能となる。

 正確に言えば、魔力を補充することで槍がファクターとなる。


「結局のところ、アサインメントは山積みとなっているよ。世界は崩壊していくにもかかわらず、その事実を誰も理解しようとはしない。……まあ、当然のことだろうね。実際のところ、世界がどうなろうと関係ない。簡単に言えば、リュージュ様の考えていることは、私には関係のないこと。ただ、強い人間と戦いたいだけ」

「つまり、あなたとしてはリュージュの思想と関係ない、と?」


 確認するようにメアリーは訊ねる。

 こくり、とフェトーは頷いた。

 フェトーの槍が赤色のオーラを纏っている。それを見たフェトーは笑みを浮かべたまま、メアリーたちに襲い掛かった。

 しかしながらその攻撃はメアリーが張ったシールドに遮られる。

 ただ、それだけではない。シールドに刺さった槍からオーラだけがシールドに移っていく。シールドが炎に包まれていく。


「炎攻撃……!」

「ただ相手に直接ダメージを与えるだけが炎魔術じゃない。簡単に言えば、ダイレクトかインダイレクトか。その違い。明確に考えたことがないから、そう言わないのだろうけれど……、結局のところ、そういうこと。この槍から伝達したオーラは、シールドに炎を纏わせた。ただ、当然ながらあなたたちにメリットのある効果は与えることはない。蒸し風呂状態になっている、とでも言えばいいのかな? だからきっとあなたたちはいま、とても暑い状態になっているはずだと思うのだけれど」


 フェトーの話はその通りだった。メアリーたちは今とても暑い状態に陥っていた。汗をかいていて、意識が朦朧としつつある。はっきり言ってこの状態を維持し続けてしまえば、倒れてしまうのは確実だろう。

 それに、こうなってしまっては、フェトーは持久戦に持ち込めばいいだけの話だ。無駄にダメージを与える必要もない。勝手に自滅するのを待つだけなのだから。

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