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異世界で、英雄譚をはじめましょう。  作者: 巫 夏希
第五章 オリジナルフォーズ編
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第百四十二話 目覚めへのトリガー⑫

 朝。

 朝日も入らないこの部屋でそれを確認するには白む空を確認するほかなかった。

 ここに来てもう三日目となるが、いつも霧がかかっていた。

 たぶんこの霧もこの場所を隠すために人工的に作られているものなのかもしれない。そうだとすれば、メアリーたちがここにやってきたとしても僕がここに居るということが解らないんじゃないだろうか。

 それにしても、僕はずっとここに閉じ込められないといけないのだろうか。バルト・イルファが深夜にやってきてから一度も来ていない。だけれど、眠れなかった。寝付くことは出来なかった。あれ程傷つけられたから仕方ない、というかも知れないが、そうであったとしても、眠らないと身体が持たないことは理解していた。

 しかし、あの魔法を言ってはいけないことを理解していたからこそ――彼女たちに対する敵意も緩めてはいけない、という思いがあった。その思いだけは絶対に崩してはならない、と。


「でもここを脱出するには……」


 扉を開ける音がした。

 入ってきたのはリュージュとバルト・イルファだった。


「……また拷問か? 言っておくが、絶対に魔法は言わない」

「それは別に構わないわよ。……取り敢えず、あなたには見せておきたいものがあるから。ついてきなさい」


 その言葉を言って、リュージュは踵を返す。中に入るのはバルト・イルファのみで、そのまま僕の鎖を外した。そしてバルト・イルファががっちりと後方についたまま、僕は外を出ることとなった。

 廊下を歩いて、僕は思った。


「……昨日とは違うルートになるんだな」

「昨日は昨日でまた違う説明だったからね。今日はあなたに状況報告をしておこうと思ったから。あなたも無関係ではないことだし」

「無関係ではない?」


 嫌な予感がする。

 リュージュが笑っていることもあるが、現状関係があるとなるとやはりオリジナルフォーズについてだろうか? オリジナルフォーズはまだ復活していないはずだ。となると、やはり眠っている姿を見せつけられるだけ? しかしそれだとあまり意味がないように見えるが、いったいリュージュは何を考えているのだろうか……。

 階段を下りて、扉を開ける。

 するとそこから強い風が吹き付けてきた。

 それを感じて、僕はその扉が外に繋がっているものであることを理解した。

 外に出ると階段が続いていた。どうやらここは火口のようだった。その火口に沿って階段がずっと地下深くまで続いている。


「……この地下に何があるんだ?」

「話を聞く必要があるのかしら? 別に私はここで話す必要は無いと考えているけれど。もし何か気になるならば、私が到着してから話してちょうだい。私としては、これ以上時間は無いのだから」


 そう言ってリュージュはさらに階段を下りていく。バルト・イルファに背中を小突かれた僕はそのままリュージュの後を追って階段を下りていくしか手段が無かった。




 階段を下りた先には、火口があった。とはいっても休火山となっているのかただの岩場が広がっているだけに過ぎなかった。

 そこには古い扉があった。


「……『神秘科学研究所』?」


 古い扉の脇には看板がついていた。その看板はとても古く、文字もところどころ掠れていて、読めないところもあったけれど、しかしはっきりとそれは――日本語で書かれていた。

 リュージュは迷うことなくその扉を開けて中に入っていく。むろん、僕も追いかけた。


「そろそろ安定期に入ったころだからね……。やっと外に出してあげたのよ」


 その中には壁一面がガラス張りになっている場所があった。それ以外は機械もある普通の研究室だった。しかし、いろいろと残置されている資料の殆どが日本語だったことは驚きを隠せない事実だったけれど。

 つまり、この研究施設は僕がいた時代から――ずっと残されていたもの、になるのだろうか。

 だとすれば、いや、だとしても信じられない。

 だってアリスは言っていた。この世界は僕の暮らしていた世界から一万年以上後の未来だと。ということはこの施設も一万年以上残っていた、ということになる。ついこの間まで人が居たような痕跡があるというのに。ずっと、前から残っていた? 正直言って、あまりピンと来ない。

 リュージュは窓から外を見つめる。

 そして僕も――そこに向かって、外を見た。

 そこにあったのは、驚くべき光景だった。

 ここに来る前に、横たわっていたはずのオリジナルフォーズ。それがはっきりと外に出ていて、二つの足で立っていた。そして、オリジナルフォーズは空に向かって叫んでいた。

 鳴き声、とでも言えばいいのだろうか。声にもならないその声は、聴いていてどこか不快なものだったことには間違いないだろう。


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