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異世界で、英雄譚をはじめましょう。  作者: 巫 夏希
第五章 オリジナルフォーズ編
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第百二十九話 一万年前の君へ⑧

「……つまり、だけれど」


 暫く何を話せばいいのか解らなかった僕たちは沈黙していた。

 そして、その場の沈黙を破ったのはメアリーだった。


「フルから見て……私たちは未来人。そしてこの世界は一度滅んで……それから『魔術』が発展した形でこの世界は一万年かけて復興した、ということなの……?」

『その通りですよ。……ええと』


 どうやらリスト以外の個人情報はインプットされていないらしい。もしかしたらそれすらもメモリの老朽化が原因なのかもしれないが。

 そもそも、一万年前に作られたロボットが今も動いているということ自体がオーパーツなのではあるけれど。


「メアリーよ」

『ああ、メアリーですか。解りました。メモリがどうも古くなってしまって、こういうことも解らなくなってしまって。申し訳ありません。もしかしたら、また名前を忘れてしまうかもしれませんが』

「いいのよ、そしたらまた名前を言ってあげる。何度だって言ってあげるわ。その方が、あなたも覚えやすいでしょう?」


 ロボット……というか機械全般として、得た情報はメモリに保存するため、0と1のデータに変換されてから保存される。即ち、一度覚えてしまえばこちらから消去しない限り忘れることは無いのだが……、それを言うのは野暮なことかもしれない。


『ええ……、そう。そうですね、ありがとうございます。メアリー。では、話を続けましょうか。あまり本筋から逸脱することも、悪くありませんが』


 そう言って、アリスは再び話し始めた。


『そもそもの始まりは地球温暖化と呼ばれる現象からでした。地球温暖化とは名前の通り、地球が暖かくなってしまう現象のことを言います。それによって何が生まれるでしょうか? 解答は非常にシンプルなものでした。地球の氷が溶けてしまい、海水位が上昇してしまいます。そうなると、ただでさえ少ない人間の住処がさらに少なくなってしまうことでしょう。さらにそれほどの環境変化はそれ以外の動物にも変化を齎し……何が起こるか解らない状態へと昇華する。その当時の科学者は口々にそう言っていました』

「……そのために、地球をリセットしたのか?」

『それ以外の理由があったこともまた事実です。しかしながら、大元となったのは間違いなくその現象であったと考えられます。そうして2011年、ある災害が人間を襲いました』


 記憶に新しい、あの災害のことか? 僕の知り合いも、そして、僕自身も被災したあの大災害。全世界が僕の国を心配し、全世界から義援金が送られた。それと同時にやり過ぎと言ってもいいくらいの『自粛』ブームへと発展していった。まあ、それ自体は僅か数ヶ月で終わってしまったのではあるけれど。

 アリスの話はさらに続く。


『それによって世界は甚大な被害を受けました。それと同時に、世界のトップたちの中にはある一つの考えが浮かび上がることになりました』

「……それは?」

『地球復活計画、通称リバイバル・プロジェクトです』


 リバイバル・プロジェクト。

 これで漸く最初にアリスが言っていた言葉の意味が繋がった。つまり僕はリバイバル・プロジェクトの被験者として、一万年もの時を超えたのだ。

 ……でも、どうやって?


『地球復活計画。そんなものが成功するとは思えない。それが当時の殆どの人間の考えでした。しかし、ある占い師がこのプランを推したことで実現しました。その占い師は予言をすることが出来ると言っていたそうです。断定的になってしまっているのは、リアルタイムで彼女にお会いしたことが無いからですね』


 彼女、と言ったということは女性ということになるのか。その占い師はよっぽど信頼を得ていたか実力を持っていたのだろう。


『……彼女の言葉には半信半疑になる人間も多くいたかもしれませんが、彼女の予言は必ず当たっていました。だから彼女の言葉に、結果として従うこととなりました。彼女がこのプランを推していたころからこのプランが実行されることは自明だったのかもしれませんが』

「それにしても、その占い師って随分と優秀で、なおかつ相手を手玉に取るのが上手いのね。何というか、今のリュージュに通じるものがあるのかもしれない」

『結局、彼女のプランは実行されることとなりました。それによって、三十年近い準備期間が必要となりましたけれどね』


 それを聞いて、僕は首を傾げた。

 今アリスは何と言った?

 準備期間が三十年?

 それだとしたらおかしい。僕がこの世界にやってきたのは2015年だ。もし2011年から直ぐ準備を始めたとしてもそれが終わるのが2041年。だめだ、どう考えても計算が合わない。


「ちょっと待ってくれ。そいつはおかしくないか?」


 だから僕はその言葉に辻褄が合わないことを物申すためにアリスに声をかけた。


『どうかいたしましたか? 何か私の説明に不備でも……?』

「不備というか辻褄が合わないんだよ、それじゃあ。僕がこの世界にやってきたとき、確か時代は2015年だった。でも、準備期間は三十年かかったんだろ? だったら最低でも僕は2041年以降にこの世界に来ていないと論理的におかしいことになる」


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