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異世界で、英雄譚をはじめましょう。  作者: 巫 夏希
第四章 封印されし魔導書編
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第百十三話 ライトス銀と魔導書⑪

「聞いたことがあります。この本……もしかしたら、『ガラムドの書』かもしれません」


 そう言ったのはライトだった。ライトの言葉を聞いて、あるワードに引っかかったルーシーは踵を返す。


「今、ガラムドと言ったかい?」

「ええ。ガラムドが自ら記した魔導書、しかもそれは唯一の魔導書とも言われています。それが、ガラムドの書。全部で五十の魔法が記載されていて、それはすべて詠唱のみで実行出来ますが、はっきり言って魔法の範疇を超えていると言っても過言ではないスケールだと言われています」

「ガラムドの書……。どうしてそのようなものが、こんなところに……?」

「危険なものを自ら晒すわけにはいかなかったのでしょう」


 静かに言ったのはやはりライトであった。


「……危険なもの?」

「ガラムドの書に収録されている魔法はスケールから違って普段の魔術とは大きく異なります。それに詠唱のみで発動できることから、魔術ではあく魔法に分類されることでしょう。しかしながら、ガラムドの書に記載されている魔法はいずれも消費エネルギーが膨大であるということと、それを詠唱出来る人間が今までいなかったと言われており、幻の書物として言われています」

「……ライト、それをどこで?」

「詰所に置かれていた書物を読みました。この地方の伝説について、でしたか」


 いつの間にそのような本を読んでいたのか――とルーシーやメアリーは思ったが、それよりも問題はフルだった。漸く頭の痛みが治まったのか、立ち上がっていた。


「フル、大丈夫か――」

「……うん、大丈夫だ。頭の痛みも引いてきた。ごめんね、心配かけてしまって。たぶん、大丈夫だから」

「……あら、まさかもう辿り着いちゃったわけ?」


 声が聞こえた。

 その声は彼らもよく聞いたことのある声だった。

 踵を返し、その相手を見つめる。

 そこに立っていたのは――ロマ・イルファだった。



 ◇◇◇



 どうしてこんな調子の悪いタイミングで出てくるのか。そう言ったところで状況が好転するわけでもないので、ただの言い訳にしか過ぎないのかもしれないけれど。

 ロマ・イルファは長い髪をかき上げて、僕たちに目線を寄せる。


「……まさか、こんなに早く魔導書を手に入れるとは思いもしなかったわ。それにしても、魔導書を手に入れないようにする、というのがリュージュ様の考えだったはず。どうしてこのようなことに……」


 僕の手元には、もう魔導書と呼ばれているそれは無かった。

 手放したわけでもないけれど、いったいどこに消えてしまったのだろうか?

 僕の様子を見ていたロマ・イルファが舌打ちをして、言った。


「何を探しているのか知らないけれど、ガラムドの書は知識の具現化として存在しているものになる。だからそれを理解してしまえば知識として吸収されることになるから、ガラムドの書は具現化されなくなる。……マズイ、そいつは非常にマズイんですよ」

「マズイ? 別に僕たちにとってはどうだっていい。むしろ有利になったと言ってもいいだろう。お前たちがどうなろうと、こちらにとっては知ったことではない」

「まあ、そういうのが普通だろうね。……致し方ない、リュージュ様に報告することにしましょうか」


 そう言って、何も言うことなく、踵を返して立ち去って行った。

 逃げていくのであれば僕たちとしては何も言いようがない。それどころか言わないでいたほうがいいだろう。今の僕たちの実力からして、まだロマ・イルファを倒すことについては少々不安が残るからだ。

 はてさて。

 ロマ・イルファがやってきたときはどうなるかと思ったけれど、ただの様子見だったということで少し安心した。これで戦闘になったとすればどうあがいてもロマ・イルファに理がある。今の場所が坑道ではないとはいえ、閉鎖空間であることは間違いない。ということはいろいろな魔術を使う可能性が考えられると言っても過言ではない。バルト・イルファが炎ときたので、ロマ・イルファは水だろうか……。

 そんなことよりも。

 とにかくこの場所から出るしかないだろう。実際問題、この場所はどういう空間なのか、はっきり言って解らない。けれど、脱出しない限りは先に進めない。


「いったいどうすれば……」


 僕はゆっくりと前に進み、出口を捜索し始める。


『……みなさん』


 脳内にまた声が響いた。

 だけれど、その声は先ほど魔導書を手に取る前に聞こえたそれとは違っていた。

 しかも今度はルーシーとメアリー、それにレイナとシュルツさんにまで聞こえているようで、それぞれ反応を示していた。


「なあ、フル。今、声が聞こえたよな。フィアノの村の、あの時のように……!」

「ああ、聞こえたよ。そしてその声は……脳内から」

『今、私はあなたたちに聞こえるようにお伝えしています。私は、あなたたちをある場所にお連れしたい。そのために声を掛けました』

「その場所……とは?」


 メアリーの問いに、少しだけ間をあけてその声は言った。


『樹に触れたものは、真の力を得ることが出来る……人間たちの中では伝説といわれている、「知恵の樹」です』


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